H.ベルリオーズ 「ローマの謝肉祭」序曲

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1937年12月21日
発売及び
CD番号
BIDDULPH(WHL 023)
SYMPOSIUM(1078)
オーパス蔵(OPK 2027)
NAXOS(8.110853)


このCDを聴いた感想です。


 テンポの良い曲ということもあってか、基本的に一定のテンポを保ち、直線的に音楽を進めています。まあ、ベートーヴェンなどに近いアプローチですね。
 ただ、メロディーの歌い込みはさすがに他の指揮者の演奏よりも何倍も濃く、力が入っています。
 最もその特徴が表れているのが、冒頭の速い部分の後に登場するアンダンテの部分で、最初のイングリッシュ・ホルンのソロからしてビブラートをかなり効かせ、表情豊かに歌わせています。さらに、もう少し先で、イングリッシュ・ホルンと同じメロディーを弦楽器がタンバリンなどの細かく刻むような伴奏をバックに歌うところは、まさに寝かしに寝かしたブランデーの如くじっくり濃厚に歌いきっています。
 しかも、この部分の伴奏は規則正しいリズムが命の伴奏ですからテンポはほぼ一定に保ったままで、せいぜいメロディーの切れ目でテンポを落とすぐらいしかテンポの変化はありません。得意のポルタメントもここだけはという特定のポイントで印象的に使われているだけです。
 一定のテンポの伴奏、メロディーもポルタメントをほとんど使わないという点では、他の指揮者とほぼ同じ条件のはずですが、メロディーの歌いこみ方はもう聴いた瞬間に分かるぐらいはっきりと違います。
 音のスピードは極端に遅く、一つ一つの音に力を入れて、といってもアクセントをつけたりするではなく、粘りのあるレガートで、じっくりドロドロと歌わせています。
 メンゲルベルクを聞いてしまうと、他の指揮者がいくら力を入れて歌わせていても、サラッとあっさり歌わせているように聞こえるぐらいです。いわば日本酒の某水如といった感じですね。
 もちろん、濃厚に歌っているからメンゲルベルクの方が良いというつもりはなく、おそらく人によっては歌いすぎてクドイと感じる方もいらっしゃるでしょう。むしろ他の指揮者ぐらいサラッと歌わせる方が合っていると思われる方もいても当然だと思います。
 ただ、わたしは濃厚に歌っていることがメンゲルベルクの魅力だと思いますし、そこが好きなのです。
 遅いテンポの部分以外の冒頭と後半の速いテンポのところも、速いテンポですからそこまでメロディーの歌いこみに差は出ていませんが、それでもギラッと輝く濃い演奏です。
 ローマといいながら、ラテン的なカラッとした乾いた明るさではなく、重みがあって少し濁ってドロドロとしたものが感じられる熱帯雨林っぽい明るさです。
 ただその分押し出しがよく、太く厚い音が次から次へと繰り出されてくるため迫力がある演奏になっています。
 モノラルなので響きがそれほど豊かではありませんが、凝縮よりもパアッと拡散する演奏です。

 この演奏を、わたしは4種類のCDで持っているのですが、個人的にはSYMPOSIUMのCDが最も音が生々しくて良いように感じられました。次にBIDDULPHとOpus蔵が同じくらいで、NAXOSは、なぜか音が割れ気味で一歩落ちます。NAXOSのCDは、手に入りやすい上値段が安く、しかも実は音が良い、モノによっては同じ演奏のCDの中でも最も音が良いことも少なくない、という印象があっただけに、ちょっと意外な気がしました。(2006/4/15)


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