H.ベルリオーズ 「鬼火のメヌエット」「妖精の踊り」「ラコッツィ行進曲」(劇的物語「ファウストの劫罰」より)

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1942年4月16日
発売及び
CD番号
Pearl(GEMM CD 9154)
BIDDULPH(WHL 023)
Refrain(PMCD-2)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクが残したベルリオーズの録音は少なく、この曲の他には「ローマの謝肉祭」序曲ぐらいしかありません。(おそらく、実演ではもっといろいろな曲を演奏しているとは思いますが)
 しかし、この「ファウストの劫罰」からの抜粋は、スタジオ録音2種類、ライブ1種類と、メンゲルベルクにしては多く3種類もの録音が残っています。
 今回取り上げる演奏は、2回目のスタジオ録音で、3種類の中で最も録音状態の良い演奏です。

「ファウストの劫罰」の抜粋には、三つの曲が含まれていますが、この中で最もメンゲルベルクの魅力が感じられるのは「妖精の踊り」だと思います。
 メンゲルベルクは、この曲のようにメロディーで幻想的な雰囲気を出している曲を扱うのが大変上手く、歌わせ方一つで変幻自在に印象を変えていきます。
 この「妖精の踊り」でも、妖精のフワフワした重さのない雰囲気が良く出ているのですが、さらにメロディーを歌わせるときにほんの少しポルタメントをかけることで、ほのかな甘さも感じさせます。しかも、このポルタメントは他の曲を演奏するときよりはずっと少なく、いやらしくなったり俗っぽくなりすぎないように考えられています。
 また、この曲はダイナミクスがずっとピアノなので、こういう古い録音でも比較的綺麗に音が録れていることも利点の一つでしょう。

 その次にメンゲルベルクの良さが表れているのは「鬼火のメヌエット」です。
 この曲は、メンゲルベルクのダイナミクスの差のつけ方の妙技を楽しむ事が出来ます。
 ピアノ部分はあくまでも軽く優しくしておき、フォルテ部分では重みのある力強い音で演奏しています。
 しかもフォルテは力強くても、アタックを硬くしたりせず、マルカートのように弾んだ丸みのある音ですから、舞曲のようなリズム感があります。
 これは、19小節目等の、八分音符三つでダンタンタンという、頭がメゾフォルテで最後がピアノという音形でハッキリとわかります。
 また2拍子のプレストになってからフルートとオーボエが延々とメロディーを吹き続けるところは、とても軽いくせに硬い音で、ちょっとコミカルな楽しげな雰囲気が感じられます。

「ハンガリー行進曲」は、曲が賑やかな分だけ、録音の悪さが不利に働いてしまいました。
 1942年のスタジオ録音なので、メンゲルベルクの録音の中ではかなり録音が良いほうであり、実際にも1926年の第1回目の録音のときよりは音は遥かに向上しているのですが、さすがに現代の録音と比べると遜色があります。
 木管や弦だけのピアノの部分は良いのですが、金管が入って全合奏になると音がごちゃ混ぜに聞こえてしまいます。
 演奏自体は、アタックを強調した重めの演奏です。
 特に最初の方はリズムもちょっともたれるような感じがあり、その傾向に拍車をかけています。
 しかし、だんだんノリも良くなってきて、終りの方に近づくにつれてテンポを速めていったり、そうかと思うと、最後でテンポを大きく遅くしたり速くしたりと動かし、劇的な展開になっています。
 聴いていて、妙に興奮してくる演奏です。

 この演奏は、PearlとBiddulphとRefrainの3種類のCDがありますが、基本的に3種類ともいい音なので、どれを選んでも問題は無いと思います。
 この中で、PearlとBiddulphは音の傾向がよく似ています。音が若干硬めですが、雑音が少なく聴き易くなっています。
 一方、RefrainのCDは、前二者に較べると雑音は遥かに多いのですが、その分音が柔らかく生々しい音で聴くことができます。
 どのCDを選ぶかはお好みで……と言いたいところですが、実際にはRefrainはまず手に入らないでしょう。また、PearlやBiddulpも常時出回っているCDではないので、結局、とにかく手に入ったCDで聴いてください、としか言うことができないんです。すみません。(2001/9/14)


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