R.ロッシーニ 歌劇「セビリアの理髪師」序曲

指揮アルトゥーロ・トスカニーニ
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団
録音1929年11月21日
カップリングベートーヴェン 交響曲第7番 他
「ARTURO TOSCANINI AND PHILHARMONIC-SYMPHONY ORCHESTRA
OF NEW YORK Volume III」の一部
発売Pearl(Victor)
CD番号GEMM CDS 9373


このCDを聴いた感想です。


 トスカニーニの「セヴィリアの理髪師」序曲の録音は、1945年6月の第2次世界大戦終了間際にNBC響を演奏したものがありますが、この録音は、それより15年以上前の1929年にニューヨーク・フィル響と行なったものです。
 旧録音と新録音とで、もちろん演奏スタイルの変化もあるのですが、楽譜上でも一箇所目立った違いがあります。
 それは、序奏が終わり、アレグロで短調の主部に入ってすぐに登場するヴァイオリンとピッコロのメロディーです。「ソソソラソ」(ホ短調での表記)という8分音符の緊張感のある動きで、これと似たパターンが数回繰り返されますが、この2回目の動きが、1回目の「ソソソラソ」の頭のソの音が休符になり「ソソラソ」となるか、それとも1回目と全く同じ「ソソソラソ」という音型を繰り返すかという2種類です。
 わたしの持っている全音楽譜出版社の総譜では、一つ音が少ない「ソソラソ」となっていて、わたしの持っている演奏の大半もそうなっています。
 トスカニーニでは、旧録音の方は、他の多くの演奏同様「ソソラソ」のパターンですが、新録音の方ではそれが「ソソソラソ」のパターンに変わっています。音が一つ多いか少ないかだけの違いとはいえ、メロディーなので思いのほか違いが目立ちます。わたしは音が少ない方で慣れていたので、どちらかというと新録音を聴いた時に少し違和感を感じました。
 演奏の方では、新録音が硬く直線的に進んでいくため、強さを感じるものの多少動きがギクシャクしたところがあるのに対して、旧録音は、いくぶん丸くスムーズに流れていきます。
 メロディーも緊張感を高くというより、伸び伸びと歌っています。特に、序奏の後半に登場するヴァイオリンで演奏される明るいメロディーは、表情が豊かです。最初の長く伸ばす音を大きくクレッシェンドしながらビブラートも強くかけていきます。しかし、やり過ぎてわざとらしくなることなく、存分に歌いながらもすっきりとした雰囲気を保っています。
 フォルテでは、力強さや迫力という点では新録音には及ばないものの、その分、パワーだけが目立つことなく、フォルテになっても軽やかでキレがあります。その一方で、音の出だしは柔らかく、響きも暖かさが感じられます。新録音が鋼製としたら旧録音は木製といったところで、頑丈さや迫力は及ばなくても、軽さや暖かみは新録音には無い魅力です。(2007/7/28)


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