G.P.テレマン オーボエ・ダモーレ協奏曲 ト長調

指揮ヴィットリオ・ネグリ
独奏オーボエ・ダモーレ:ハインツ・ホリガー
演奏ドレスデン国立管弦楽団員
録音1972年5月
カップリングP.I.ルクレール オーボエ協奏曲 他
「バロック・オーボエ協奏曲集」より
発売ユニバーサル・ミュージック(PHILIPS)
CD番号UCCP-3507(480 0143)


このCDを聴いた感想です。


 オーボエ奏者が持ち替えて演奏できる、オーボエの仲間には、ベルリオーズの幻想交響曲やロドリーゴのアランフェス協奏曲のソロなどで知られる、オーボエより5度低いイングリッシュ・ホルン(コール・アングレ)などがあります。オーボエ・ダモーレも、同じようにオーボエやイングリッシュ・ホルンの仲間で、オーボエとイングリッシュ・ホルンの中間の大きさですから、音域もだいたい中間です。オーボエでCの音を出す指使いをした時に出てくる音が、それより3度低いAの音になります。
 このオーボエ・ダモーレという楽器は、今回取り上げるテレマンもそうですが、バッハなどのバロック時代の作曲家はよく用いていました。マタイ受難曲なんかにも、当たり前のように登場し、第19曲のソプラノのアリアでは2本セットで魅力的に伴奏しています。ついでに、マタイ受難曲はオーケストラが2つありますから、それぞれ2本ずつで計4本も必要となり、アマチュアが演奏する場合、楽器を揃えるだけでも結構大変なのではないかと思います。
 それだけ頻繁に用いられてきたオーボエ・ダモーレですが、ハイドンなどの古典派の時代に入ると、急にパタッと使われなくなります。そのまま一世紀ぐらい完全に過去の楽器として忘れ去られていましたが、二十世紀に入った頃から、徐々に復活し始めます。特にラヴェルの「ボレロ」でソロを担当したのが大きかったのではないでしょうか。
 現在では、知名度や普及度は、オーボエとイングリッシュ・ホルンには及ばないまでも、その次ぐらいには位置すると思います。さすがに、ホルストの「惑星」ぐらいしか出番が思い出せないバス・オーボエや、リヒャルト・シュトラウス専門楽器と呼びたくなるヘッケルフォンよりははるかに上でしょう。
 オーボエ・ダモーレに話を戻しましょう。
 オーボエ・ダモーレの名前の意味は、イタリア語で「愛のオーボエ」という意味らしいので、音色もオーボエに較べて甘い感じかというと、そうでもありません。もちろんこれは演奏者と演奏にもよるのでしょうが、少なくともこのCDで聴くホリガーのオーボエ・ダモーレは、オーボエに較べて甘い音色ではなく、音域が低いこともあって、柔らかく深みのある音です。実は、わたしはホリガーのオーボエの音色は、鋭すぎてあまり好みではないのですが、オーボエ・ダモーレでは、その鋭さが良い具合に抑えられて、耳に快い柔らかな音になっています。もともとテクニックは文句無しですから、音色により音楽が豊かな深みを備えて聞こえてきます。
 一方、曲の方ですが、バロックの中でもより大衆的といわれるテレマンだけあって、非常に親しみやすいものです。メロディーの一つ一つが耳に馴染みやすく、しかも、ゴチャゴチャと複雑なテクニックを使っていないため、すごく身近に感じられます。
 中でも印象に残ったのが第1楽章です。
 楽譜に記載されている「Soave(甘美に、穏やかに)」の指定通り、ゆったりと流れるようで、ヨーロッパの王宮を思い出せるような、優雅で品のある音楽になっています。オーボエ・ダモーレの音色の柔らかさと深みが非常に曲調に合っていて、オーボエではなくオーボエ・ダモーレならではの特色が上手く生かされています。他の楽章も良いのですが、この楽章だけでも繰り返して聴きたいぐらいです。
 ちなみに全曲では、楽章は4つあり、緩−急−緩−急の順番になっています。
 第1楽章以外の緩徐楽章である第3楽章は、ゆっくりとしたテンポは第1楽章と共通していますが、雰囲気はかなり異なります。短調系で暗く、ずっと静かな雰囲気です。メロディーの歌い方もかなり感情が入っていて、アルビノーニのアダージョなどに近く、しみじみとしています。
 速い第2楽章、第4楽章も、それぞれ異なった雰囲気です。
 第2楽章は、上下の動きが激しく(激しくといってもあくまでもバロックの範囲での話ですが)、鋭く縦に伸びていきます。直線と基調とした動きで躍動感があります。
 一方、第4楽章は、同じく速いテンポではあるものの、同じ音を連続して刻むような動きが多く、メロディーも音階で連続するなど動きが滑らかで、クルクルと回る舞曲のような印象を受けます。とはいえ、曲の指定がVivaceとあるように活発で、優雅に始まった曲を締めくくるのにふさわしい華やかな曲調です。
 ちなみにテレマンのオーボエ・ダモーレ協奏曲は、もう一曲、イ長調のものがあるらしいのですが、それはまだ聴いたことがありません。しかし、こちらがこれだけ良いのですから、イ長調の方もかなり期待が持てます。これは近いうちにぜひ聴いてみたいものです。(2009/11/28)


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