指揮 | ジョン・バルビローリ |
演奏 | ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 |
録音 | 1964年1月 |
発売 | EMI |
CD番号 | CDM 7 63115 2 |
この録音は、もともとは予定に無かったはずなのが、客演のバルビローリの演奏に感銘を受けたベルリンフィルの団員の強い要望により録音が行われることになったという、有名なエピソードがあります。 この曲は構造的にはかなり複雑で、第1楽章にいたってはソナタ形式の限界に挑戦してるのじゃないかと思えるほどです。 わたしも、なかなか馴染めず、スコアとつき合わせて何遍も聴いていくうちに、やっと楽しめるようになりました。 まあ、馴染めるようになった大きな原因は、各楽章とも雰囲気がハッキリしていたということもあります。 第1楽章と第4楽章のアンニュイな雰囲気と、第2楽章の楽しげ(?)な雰囲気、第3楽章の激しい雰囲気との対比の大きさが、聴いていて飽きを感じさせません。 この四つの楽章の中で、「死」を感じさせる第1楽章と第4楽章が曲のメインだと思いますが、わたしは実は第2楽章が一番好きです。 曲調は明るく楽しげなのですが、どこか幻のような感じがして、現世から離れた世界のように聞こえます。 イメージとしては、マーラーの交響曲第1番の第2楽章と重なっているような気がします。 演奏の傾向では、マーラーの演奏にしては、健康的に聞こえます。 バルビローリの他のマーラーの演奏を聴いたことが無いので、バルビローリの特徴なのかはわかりませんが、旋律をよく歌わせているいるのにもかかわらず、感情に溺れることがなく、むしろスッキリと言えるぐらいで聴いていて気持ちがいい演奏です。 第4楽章も、録音のときに、もともとは午前中に組まれていた第4楽章のリハーサルを、バルビローリ自身が、午前中の元気いっぱいの時間よりも午後の黄昏た時間でないと第4楽章を正しく理解できないのではないかと事務局を諭して、夕方に時間を変えさせたというエピソードが残っているぐらいで、非常に大事にしていたことがわかりますし、雰囲気を強調しすぎて泣かせに走ったりせず、キッチリ聴かせてくれます。 ただ、吉田秀和著の「世界の指揮者」のバルビローリの項によると、同じような雰囲気の交響曲第5番の第4楽章のアダージェットは非常に甘美な憂愁を湛えた演奏だそうですから、この演奏がたまたまこういう傾向だっただけかもしれませんが。 全体的に、「死」よりも「希望」が感じられます。 演奏とは全く関係ないのですが、ベルリンフィルを取り上げるのは今回が初めてです。バルビローリを取り上げるのも初めてですが… 感想を書いてきたCDは70枚を超えるのに、今回が初めてとは何だかな〜という気がします。 決して持っている枚数が少ないわけではなく、だいたいメンゲルベルクにもベルリンフィルを振った録音があるというのに……う〜ん(2000/6/30) |