G.マイアベーア 戴冠式行進曲 歌劇「予言者」より

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック
録音1929年1月15日
発売及び
CD番号
Pearl(GEMM CD 9474)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクとの直接の関わりではありませんが、作曲者のマイアベーアといえば、ナチスの時代には、俗に『3M』と呼ばれ(…何だかどこかの文房具メーカーみたいですが(汗))、メンデルスゾーン、マーラーと並んで、典型的なユダヤ音楽として、演奏する事が禁じられていました。
 メンゲルベルクも、ナチの占領下で活動していたため、オランダがナチスに占領された1940年以降は、おそらく公開の場では演奏しなかったでしょう。
 そのためもあってか、メンゲルベルクのマイアベーアの録音は、これ一曲の一回のみですし、1920年代の、それもアメリカでの録音です。
 まあ、同じように禁止された残りの2Mである、メンデルゾーンとマーラーについては、さすがに全てナチス占領以前ですが、それでも何曲か録音を残しているという点を考えると、マイアベーア自体の知名度が、他の二人に較べて一枚落ちという事情の方が大きな理由かもしれません(笑)
 いや、実際、わたしも今でこそマイアベーアと言われても「ああ、あのマイアベーアね」と納得できるぐらい、重要な作曲家である事がわかっているのですが、昔、初めて、ナチスから禁じられた『3M』の話を聞いたときには、「メンデルスゾーンとマーラーといえば、バリバリのユダヤ系だよなぁ。それと残りの一人がマイアベーア………マイアベーア? 誰だ、それ?」と思ってしまったぐらいですから(汗)
 その当時のわたしが、いかに作曲家について知らなかったかがよくわかります(笑)
 しかし、この3人、時代的に見ると、マーラーだけ完全に別枠ですね。
 マイアベーアとメンデルスゾーンは、ほぼ同じ時代……というか、メンデルスゾーンの生涯が短すぎて、マイアベーアより18年も後に生まれているのに、マイアベーアが亡くなるのより17年も前に亡くなっているため、完全に被さっています。
 一方、マーラーは、一応マイアベーアが存命中に生まれてはいるのですが、亡くなる四年前で、活動時期は完全に離れています。
 それにしても、『3M』とひとくくりにされている割には、この3人の音楽には、あまり共通性が無いように思えるのですが……(汗)
 やっぱり、同じユダヤ系で頭文字がMの作曲家という事だけなんでしょうかね?

 前振りが長くなってしまいましたが、肝心の演奏についての感想です。
 まずは、冒頭からその引き締まった音に驚かされました。
 録音の具合もあるのかもしれませんが、響きが固くまとまっていて、残響が少なくキレが良い音です。いかにもマーチらしいキビキビした音楽になっています。
 また、この曲は、大雑把には、冒頭からの主部(A)と中間部のトリオ(B)の二種類の音楽があり、これがA−B−A−B−Aという構成になっています。
 その中でトリオは、華やかな主部に較べるとゆったりとしたメロディーで、わずかにテンポが遅くなる事もあります。
 メンゲルベルクも多くの演奏と同様、主部に対してトリオは若干テンポを緩めています。また、マーチということもあり、部分的に急にテンポを遅くしたりとか、逆に速めたりといった事もほとんど無く、そのトリオでの多少のテンポダウンを含めてもほぼ一定のテンポをキープしていると言えるでしょう。
 そのため、テンポという点ではメンゲルベルクの特徴はあまり出ていないのですが、その分、メロディーの歌わせ方には目を見張らされました。
 特に、トリオのゆったりとしたメロディーは、『流麗』という形容をしたくなるような歌わせ方で、音から音への移り方が非常に滑らかなのです。
 メンゲルベルクは、こういう音から音への移り変わりを滑らかにする時には、いっそポルタメントにしてしまう場合が多いのですが、この曲では、ポルタメントは使わずに、ポルタメントになる寸前のギリギリのところで止める事で、マーチらしい堂々とした雰囲気を損ねずに、流れるような潤いのある音楽を創り出しています。
 さらに、一回目のトリオの最後の方に、フォルテまでクレッシェンドしていって、そこで急にピアノに落とす部分があるのですが、このダイナミクスの変化も見逃せません。
 ニューヨーク・フィルの能力の高さと、大編成のオーケストラである利点を生かして、正に抜けるように、一気にかつ自然に、力強いフォルテから柔らかなピアノへと変化させているのです。

 録音の方は、細かい個々の楽器の音が聞こえ難いという難があるものの、雑音も少なく、1920年代としては、なかなか良い録音だと思います。
 やはり、アムステルダムではなくニューヨークなので、設備も充実しているのかもしれません。(2002/12/6)


サイトのTopへ戻る