G.ホルスト 吹奏楽のための第1組曲 変ホ長調

指揮フレデリック・フェネル
演奏イーストマン・ウインド・アンサンブル
録音1955年5月9日
カップリングホルスト 吹奏楽のための第2組曲 他
発売Mercury
CD番号462 960-2


このCDを聴いた感想です。


 聖典です。

 ……というのは冗談にしても、吹奏楽にとって、この「吹奏楽のための第1組曲」という曲は、基本中の基本といっても良いでしょう。
 オーケストラでいうところのベートーヴェンの交響曲第5番のようなもので、どこかしらで耳にする機会も多く、また、演奏してみたいと思う人が多い曲でもあります。
 かくいうわたしも、吹奏楽をやっていた頃、一度でいいから演奏したいと思っていました。ただ、残念ながら演奏する機会はありませんでしたが……

 この曲は、組曲という名前のとおり、「シャコンヌ」「間奏曲」「マーチ」の3曲で構成されているのですが、全曲を通しても10分前後と短く、しかも単純にテクニック的な面に限ると実はそれほど難しい曲ではありません。
 しかし、メロディーが非常に魅力的であり、曲の構造も単純ながらポイントを押さえた作りになっているため、懐が深くシンフォニックな響きがあります。
 特に第3曲の「マーチ」はその特長がもっとも強くあらわれています。
 この第2主題は、同じホルストが作曲した「惑星」の「木星」の有名なメロディーと雰囲気が驚くほど良く似ています。
 こういう風に、民謡風のゆったりとしたメロディーをホルンに朗々と吹かせるのがホルストの得意技でもありますが、曲の規模といい、編成といい、大きさには天地の差があるのにもかかわらず、その響きの奥深さは「惑星」と全く引けを取りません。
 そう考えると、この曲は、吹奏楽の曲の中でも最もオーケストラに近い響きがある曲といえるかもしれません。
 その一方で、ベースに管楽器の明るさと華やかさが感じられるところは、ちゃんと吹奏楽としての特長も十分に生かしています。

 フェネルは、長年吹奏楽に貢献してきた指揮者だけあって、この曲を3種類も録音を残しています。(一枚はライブ録音ですが)
 今回のイーストマン・ウインド・アンサンブルの他に、1978年にクリーブランド管の管楽セクションと、1982年に東京佼成ウインドオーケストラとのライブ録音があります。
 この3種類の録音の中で、今回のイーストマン・ウインド・アンサンブルの録音が一番古く、他の2種類がデジタル録音なのに、この録音はステレオ録音でさえなく、モノラル録音です。
 ただ、モノラルといっても、1955年なので、もう最末期ですし、マーキュリーという事もあり、録音自体は決して悪いものではありません。というか、おそらくほんの数ヶ月でステレオ録音になった筈ですから、逆に惜しかったというところでしょうか。
 まあ、それはともかく、今回、なぜ一番古い録音を取り上げたかというと、この演奏が一番精悍な印象を受けたからです。
 もしかしたら、モノラルである事がかえって有利に働いているのかもしれませんが、響きが拡散したりせず、ガッチリ真ん中に固まった芯のある音になっています。
 さらにパーカッション類も、音を短めに切って、キレのある音楽をつくり出しています。
 後年の演奏の方が、余裕はあるのですが、この演奏の方が若々しく、全体的にスッキリしています。わたしとしては、こちらの方が好みです。

 今回は取り上げませんでしたが、ホルストには、この第1組曲の他に、もう一つ姉妹作に「吹奏楽のための第2組曲」という曲があります。
 第1組曲のメロディーが、民謡風とはいえ、あくまでもホルストのオリジナルなのに対して、第2組曲のメロディーの方は、実在の民謡をモチーフにしているという違いはありますが、全体の雰囲気は、ほぼ共通していて、この曲も第1組曲に負けず劣らず魅力的な曲です。(2002/6/14)


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