G.F.ヘンデル 歌劇「クセルクセス」より「ラルゴ」

指揮グィド・カンテルリ
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団
録音1956年4月8日
カップリングヘンデル オラトリオ「メサイア」より序曲 他
発売AS disc
CD番号AS 618


このCDを聴いた感想です。


 以前、カンテルリのNBC響との演奏について書きましたが、これは同じCDに収録されている、ニューヨーク・フィル響とのもう一つの演奏です。
 録音時期はNBC響とのものより約3年後の1956年。カンテルリが亡くなる年(亡くなる半年前)にあたります。そういう点では最晩年の演奏と言えなくも無いのですが、なにせ亡くなる理由が飛行機事故ですから、本人にはそんなつもりは全く無かったことでしょう。
 ただ、演奏はNBC響とのものに比べ、表現は穏やかでテンポも速く、なぜか本当に晩年のような枯れた雰囲気があります。
 編曲はNBC響の時とおそらく同じで、前奏は木管のアンサンブル、一回目のメロディーはハープの伴奏を伴ったヴァイオリンのソロ、二回目(最後)のメロディーはオーケストラの全合奏で、二回目の後半にはトロンペット、トロンボーンなどの金管が加わり、終盤にはティンパニーまで登場するという、ラルゴのオーケストラ版の編曲の中では、ラインハルト版を超えて最も華やかなものの一つです。
 NBC響との演奏では、テンポを遅く取ってメロディーも粘らせてじっくりと歌い、最後にはさらにテンポを引っ張って大きく盛り上げるという、かなり劇的な効果を狙った演奏をしていました。
 一方、このニューヨーク・フィル響との演奏は、表現がずいぶん抑えられています。
 録音がそれほど良くなく、細かい動きが鮮明でないというのもあるかもしれませんが、NBC響の時のような粘りに粘ったドロドロとした歌いこみが薄れ、歌ってはいるものの、サラッと風通しがよく、穏やかな雰囲気です。
 例えば、終盤に、盛り上がりの頂点で音をフェルマータで大きく伸ばし、次に急に弱いピアノになる部分があるのですが、NBC響の時には、フェルマータの音をさらにクレッシェンドして思いっきり伸ばしたところでスパッと切り、しばらく間を空けてやおら次のピアノが入ってきていました。しかし、ニューヨーク・フィル響の時は、フェルマータで伸ばしている音も、長さは充分に長いもののさらにクレッシェンドするようなことはせず、次のピアノも空白を開けずにすぐにさりげなく入ってきます。
 効果を狙った演出を削り、穏やかな表現にすることで、華やかさは減りましたが秋の空のように高く澄み、しみじみと心静かに落ち着く演奏になっています。
 一般的なラルゴの演奏のイメージに近いのは、むしろこちらの演奏の方かもしれません。
 NBC響との劇的で華やかな演奏もそれはそれで圧倒されるのですが、このニューヨーク・フィル響との穏やかな演奏も静かに訴える力がありこちらも魅力的です。(2006/5/6)


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