G.F.ヘンデル 水上の音楽

指揮エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1958年7月1〜5日
カップリングJ.S.バッハ 管弦楽組曲第2番
発売日本フォノグラム(PHILIPS)
CD番号25CD-909(420 857-2)


このCDを聴いた感想です。


 現在ではちょっと珍しくなった大編成の現代楽器による演奏ですが、その特性を上手く生かしています。
 その特性というのは大編成にふさわしい圧倒するような大音響による大きなスケールかというと、実はそうではありません。
 たしかに厚い響きでスケールの大きな部分もありますが、他の現代楽器の演奏にもっとスケールの大きなものはありますし、迫力だけなら、古楽器の小編成の演奏でも、例えばアーノンクールのように斬新な響きの方がむしろ豪快に感じます。
 この演奏でわたしが感嘆したのはフォルテよりもピアノの部分です。
 そこに大編成のオーケストラならではの密度の濃さを感じました。
 最も良い例が第1組曲の第8曲のブーレです。この曲は、同じメロディーが3回繰り返され、最初が弦だけのピアノ、2回目が木管だけのピアノ、最後は両者合せてメゾ・フォルテぐらいで演奏されます。
 この最初の弦のピアノを、ヴァン・ベイヌムは、音量はごくごく小さく絞りながらあくまでも強く弾かせています。音量さえ大きければフォルテといって良いぐらいの強さです。
 つまり本来ならフォルテの大きさの音を、目一杯圧縮して小さく固めているのです。
 いくら弦楽器だけとはいえ、元が大編成の響きを小さく固めているわけですから、いまにも超新星になりそうなぐらい非常に密度の高い音になっています。そのため、聞こえてくる音量はたしかに小さいのに、その背後には音量の何倍もの響きが隠されており、ちょっとした一つの音に至るまで重く強い存在感を見せています。
 この部分は、小編成によるスピード感溢れる軽い演奏も好きでしたが、全く方向性が違うこういう演奏もあるのか、と驚かされました。
 一方、他の曲などのフォルテの部分は、あまり聴く者を圧倒させるような強い響きではなく、芯は少し細く、軽くて広い響きによる、どちらかというと柔らかい響きです。
 小編成だと、楽器が少ない分、骨太のフォルテになりやすいため、これも大編成ならではの柔らかさといえるかもしれません。
 ピアノでの密度の高さによる緊張感といい、フォルテでの聴く者を圧倒しない大きな響きといい、非常に気持ちよく、さらに録音もかなり良いこともあり、この演奏は、ヴァン・ベイヌムが遺した録音の中でも最も良いものの一つではないかと思っています。(2004/11/6)


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