G.F.ヘンデル 第2曲「わが民を慰め」(Comfort ye)
第3曲「もろもろの谷は高くせられ」(Ev'ry valley shall be exalted)
第26曲「そしりが彼の心を砕いたので」(Thy rebuke hath broken His heart)
第27曲「彼に下された苦しみほどの苦しみが」(Behold,And see if there be any sorrow)
〜オラトリオ「メサイア」より〜

吹奏楽伴奏版

指揮不明
独唱テナー:エヴァン・ウィリアムズ(Evan Williams)
演奏不明
録音1908年7月23日(第26曲、第27曲)、1910年9月27日(第2曲、第3曲)
発売KOCH(Victor)
CD番号3-7703-2Y6x2


このCDを聴いた感想です。


 年代的には以前紹介したクイーンズホール管弦楽団員による演奏とほぼ同じですが、歌い方はこちらのエヴァン・ウィリアムズの方がより重厚です。
 クイーンズホール管弦楽団員盤の方(独唱はジョン・ハリソン)は、テンポをかなり自在に動かし、良くも悪くもオペラのアリアみたいだったのに対して、ウィリアムズは、もっと直線的で落ち着いています。どっしりと構え、少しゆっくり目のテンポでじっくりと歌い上げています。
 といっても、さすがに後年の即物的といわれる演奏スタイルに較べると、はるかにロマンチックで、クライマックスでは音を存分に伸ばして美声をたっぷりと聞かせ、ここぞという部分でテンポを大きく落とすことも厭いません。
 全体としては古臭いタイプに入るのでしょうが、オペラ的な演技臭はかなり薄くなっています。歌い方も、表情を付けるというのではなく、一音一音をよく響かせて、声の魅力を前面に出して、第2曲や第3曲のような明るい曲はもちろんのこと、第26曲や第27曲のような沈んだ曲調の曲でさえ、たっぷり伸び伸びと歌い上げています。それでも演技をたっぷり入れた歌い方よりはまだオラトリオに合っているのではないかと思います。多少なりとも直線的な表現になっているあたり、よりモダンな系統へ半歩ばかし踏み込んだ気配は感じられます。
 直線的な歌い方については、この演奏がアメリカで録音されたという点も多少は影響しているかもしれません。
 CDに付属していたリーフレットによると、なんでもこの録音はアメリカでのメサイアの録音としては最初期のものの一つだそうです。
 独唱のエヴァン・ウィリアムズ(1867-1918)は、ウェールズの移民の息子でオハイオで育ち、クリーブランドで学び、1896年にデビューしています。どうやらオラトリオや演奏会での歌唱が活動の中心だったようです。オペラはあまり守備範囲ではなかったようで、この辺りも歌い方に演技臭が薄い要因の一つでしょうね。ちなみに「エヴァン・ウィリアムズ」の名称をネットで検索すると、「ブロガー」という言葉を発明したとされる実業家ばかり引っかかってきます。
 伴奏はクイーンズホール管弦楽団員盤と同じく吹奏楽です。記載はされていませんが、やはりモーツァルト版をベースにしているようです。聞き取れた限りでは、かなり近い編曲ではないかと思います。
 ただ、何分録音年代が1906年と1910年という、電気録音でさえ、それから15年も待たないといけないぐらいの年代ですから、細かい部分まではとても聞き取れません。
 主役のウィリアムズの声はさすがに鮮明に聞き取れますが、伴奏はほとんどおまけ同然です。まあ、指揮者も演奏者も「不明」という時点で、いかに軽視されているかがわかります。貧弱な録音から聴いた限りですが、個人的にはクイーンズホール管弦楽団員の演奏より、むしろしっかり演奏しているように聞こえました。(2011/5/14)


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