G.F.ヘンデル オラトリオ「メサイア」

指揮ヘルムート・コッホ
独唱ソプラノ:レジーナ・ヴェルナー
アルト :ハイデン・リース
テナー :ペーター・シュライアー
バス  :テオ・アダム
チェンバロ:ディートリヒ・クノーテ
演奏ベルリン放送交響楽団
ベルリン放送合唱団
録音1973年5月,6月
発売BERLIN Classics(edel)
CD番号0021242BC


このCDを聴いた感想です。


 ドイツ語による歌唱、シュライアーやアダムといった名だたる独唱陣、これらの要素からも予想できる通り、重厚長大な演奏です。大編成のオーケストラらしく響きは厚く、堂々としています。
 しかし、堂々としていながらも、決して、どっしりと重く押しても引いても動かないような鈍い演奏ではありません。
 テンポは、遅めを基本としていながらも、曲によっては意外なほど速かったりと、結構テンポに差があります。例えば、冒頭のシンフォニアは、聴いた瞬間、「これは3時間コースかな」と覚悟したくなるぐらい、まさに遠大なテンポで始まります。
 ところが第2曲の「Troestet ihr mein Volk(ドイツ語なので)」に入ると、テンポが急に速くなり、するすると流れて行きます。今までまるで重い荷物を背負って一歩ずつ踏みしめるように歩いていたのが、すっと荷が軽くなってすたすたと歩き出したようで、その落差に驚きました。
 その後は速いテンポのまま進むのかな、と思っていると、第4曲「Denn die Herrlichkeit Gottes,」に入ると、また急に踏みしめるようなゆったりとしたテンポに戻るのです。
 どうやら、独唱の曲は速く合唱曲は遅めという解釈らしく、第1部最後の第18曲「Sein Joch ist sanft,」なども楽譜上はテンポ指定はアレグロなのにちっともアレグロではなく、スローモーションの動きを見ているかのようです。なにしろ他の演奏が3分弱しかかかっていないのにコッホは3分44秒もかけているのですから。シェルヘン(新盤)と並んでもっとも遅いうちの一つだと思います(もっともシェルヘンは他の曲も遅いですが)。ただ、遅いだけに非常に丁寧で、一音一音噛みしめるようにしっかりと歌っていて力がこもっているため、テンポが遅くても間延びしているわけではありません。
 その一方で、第20曲「Er ward verschmaehet」などは、アルトの長いアリアですから、じっくり歌うと思いきや、他の演奏よりもむしろ速めのテンポです。こちらは一音一音しっかり歌うというより、もっと長いスパンのフレーズ全体で大きく歌っています。
 また、オーケストラの響きも厚いのですが、だからといって、ぎっちりと目が詰まって叩けばカーンと音がしそうな、息苦しいほど密度の濃い響きではありません。
 むしろフワッとした感触で、綿のように柔らかく、音を暖かくくるんでいます。
 もちろん、フワッとしているといっても、モヤモヤと手応えの無い演奏では無く、音自体は明確ながらも、小編成でよく見られるような突き刺すような鋭い音ではないということです。しっかりとした音ながら、やさしく語りかけてくるように聞こえてきます。
 もう一つ特筆しておきたいのがチェンバロです。
 伴奏に時々加わるチェンバロですが、この音色がなんとも良いのです。
 柔らかく、それでいてキラキラと澄んでいます。オーケストラ全体の厚くフワッとした響きに溶け込んでいながら、しっかりとした存在感があります。
 大編成で落ち着いたメサイアを聴きたいけど、あんまり重々しすぎるのはちょっと、という気分の時に聴きたくなる演奏です。

 ドイツ語歌唱という点が特殊ですが、どの楽譜を使用しているかという点では、わりと標準的です。唯一少し違うのが第43曲「Die Tromba ershallt」で、このバスの長いアリアは、楽譜上は、最後まで行った後ダル・セーニョして第28小節の3拍目に戻るはずですが、この演奏は、ダ・カーポして最初まで戻っています。(2010/10/30)


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