G.F.ヘンデル オラトリオ「メサイア」

出演ソプラノ:キム・アンプス、ヘレン・パーカー
カウンター・テナー :アンガス・デヴィッドソン(Angus Davidson)
アルト :フランチェス・ジェラード(Frances Jellard)
テナー :ロビン・ドーブトン(Robin Doveton)、ジョン・ボウエン(John Bowen)
バス  :デイヴィッド・ヴァン・アッシュ、エイドリアン・ピーコック
演奏スコラーズ・バロック・アンサンブル
録音1992年7月6〜9日
発売NAXOS
CD番号8.550667/8


このCDを聴いた感想です。


 指揮者をおいていないことからも想像できるように、少人数小編成による演奏です。合唱はソリストを含めて14名、オーケストラも総勢15名しかいません。
 テンポは、一昔前の大編成による演奏よりは速いものの、古楽器系や小編成系では平均的といったところでしょうか。ミンコフスキやマクリーシュみたいに驚くほど速いわけではありませんが、良いテンポでキビキビと進んでいきます。
 もちろん、小編成ですから重量感はそれほどなく、また、気合を前面に出して強く迫ってくるようなタイプの演奏でもありません。風に乗った葉っぱが、その辺りを漂っていると見せかけて、ちょっと目を離した隙に思わぬ遠いところまで飛んでいくように、軽くフワッとしているようで、なかなか動きも素早いという、身軽な演奏です。
 ところが面白いことに、それだけ軽い演奏にもかかわらず、トランペットが出てくるような華やかな曲に限っては、他の曲での軽さが嘘のように、響きは厚く、力強い音なのです。
 ハレルヤ・コーラスや最後の「Worty is the Lamb」では、曲の冒頭こそ他と同じくらいのメゾ・ピアノぐらいから始まりますが、どんどんテンションが上がって行き、終盤になると、トランペットはファンファーレのように響き渡るわ、ティンパニーは硬い音でリズムを刻み込むわで、強さはほぼフォルティッシモぐらいまで達しています。特に、トランペットの存在感の強さは他を圧倒するほどで、後半の「King of Kings」とソプラノが歌う場面でドシラソと下に下がってくるトランペットのファンファーレをこれほど力強くしっかりと吹いているものは、わたしが持っているメサイアの演奏の中でもそう多くはありません。
 他の小編成の演奏では、ハレルヤ・コーラスだからといってむやみに力を入れたりせず、響きの美しさを前面に出したり、穏やかにまとめているものも多いのに、この演奏では、大編成の向こうを張れとばかりに気合が入っています。こういった強く出す曲と抑える曲の扱いに大きく差をつけるのは、メリハリがあった結構好みです。
 もう一つ特徴なのが、1942年ダブリン初演版を使っているところです。
 第16曲の「Rejoice」が一般的な4分の4拍子ではなく、8分の12拍子だったり、第6曲の「But who may abide」がバスのソロだったりとちょっと変わったバージョンが使われています。特に第34曲の「How beautiful」が二重唱になっているものは、わたしの持っている演奏の中でもこれを入れても6枚しかなく、なかなか貴重なものです。ただ、バスのソロで歌われている第32曲の「Thou ar gone up on high」は、わたしの知る限りではバスのソロなのは1741年の初稿までで、1742年の初演版では既にアルトのソロのはずです。しかし、このCDの解説によれば、アルトのソロになるのは1750年版からだそうで、これは他の資料も当たってみる必要がありそうです。
 まあ、そういった細かい話はさておき、NAXOSということもあって、希少な版と良い演奏なのに、2009年2月現在で2,500円ぐらいと安価に入手しやすいのは大きな魅力だと思います。(2009/2/7)


サイトのTopへ戻る