G.F.ヘンデル オラトリオ「メサイア」

ライト編曲版

指揮ジョン・プライス=ジョーンズ
出演ソプラノ:Mary Hegarty
メゾ・ソプラノ:Carole Wilson
テナー :Aled Hall
バス  :Gidon Saks
トランペット:Maurice Murphy
演奏ブラック・ダイク・バンド
ハリファックス合唱協会
録音2001年11月4・5日
発売DOYEN
CD番号DOY CD110


このCDを聴いた感想です。


 数あるメサイアのCDの中でもちょっと異色な演奏。ブラスバンドによる演奏です。
 木管も入る吹奏楽版ではなく、金管と打楽器のみのブラスバンド版というのは、吹奏楽が主流でブラスバンドがあまり盛んではない日本では演奏する機会もまず無いでしょうし、なかなか珍しいのではないでしょうか。
 録音は2001年と最近ですが、編曲自体は新しいものではありません。このライト編曲による版は、初演は1946年11月13日(ライト本人の指揮による)で、戦後間もない頃ですから、現在(2007年)から60年以上前のことです。
 編曲の内容としては、原曲のオーケストラの部分をブラスバンドで演奏したようなもので、合唱やソロなどの声楽部分は、原曲通り歌手によって歌われています。
 また、金管が主体になっているからといって、原曲をキンキラキンに金メッキしたみたいに派手になっているかというとそうでもありません。
 たしかに、原曲には無い装飾的な動きやティンパニーの出番の追加などはありますが、打楽器もティンパニーの出番が増えているぐらいで、他の楽器は出てきません(聴いた限りでは)。
 メサイアの編曲中最もド派手なグーセンス版とはもちろんのこと、モーツァルト版と較べても華やかさでは及ばないと思います。聴く前は金管楽器が原曲よりも多く登場するモーツァルト版を基にそこから編曲したのかと思いましたが、派手さを抜きにしてもモーツァルト版と異なる部分が多く、どうやらモーツァルト版ではなく原曲を基に編曲しているようです。
 華やかさよりもハーモニーの美しさをアピールした演奏で、表情付けを抑え、原曲よりもむしろ透明感のある響きになっています。金管がバロック以前は宗教音楽の方がメインだった歴史を再現するかのように、世俗を離れ、感情などを超越した神聖な世界に近づいています。
 ところが、それを世俗の方に思いっきり引き戻しているのが声楽なのです。
 歌は、いくら宗教曲とはいえ、力強さや情熱を持って歌われているため、どうしても生々しさがあります。
 決して下手ではありませんし、声楽だけに注目して聴けば、それはそれで良いのでしょうが、どうも雰囲気がうまくかみ合っていません。
 極端に言えば、感情などの人間らしさから離れて別世界に行こうとしているブラスバンドを、声楽が強引に人間界に引き戻しているような感じがするのです。
 いっそのこと、完全にインストゥルメンタルにして歌の部分もバンド側に担当させた方が全体に統一感が出て、今までのオーケストラ版よりももっと純粋な姿のメサイアができたのではないかという気がします。
 まあ、曲自体が長いので、あまりにも整いすぎた世界に行ってしまうと、途中で飽きてしまう恐れもありますが。
 そういえば、聴いていて意外に思ったことが一点あります。
 それは、第1部の最後の第18曲の『His yoke is easy, His burthen is light』がカットされていることです。
 たしかに抜粋盤などでは取り上げられることが少ない曲ですが、全曲盤では第1部の最後ですし、カットされることはほとんどありません。
 ライトが編曲する際にカットしたのか、この演奏を指揮しているプライス=ジョーンズの独断でカットしたのかはわかりませんが、ちょっと珍しいと思います。(2007/7/7)


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