G.F.ヘンデル 第3曲「もろもろの谷は高くせられ」(Ev'ry valley shall be exalted)
〜オラトリオ「メサイア」より〜

ピアノ伴奏版

独唱テナー:W.D.マクファーランド(McFarland)
ピアノ:不明
録音1899年
発売KOCH(Gramophone)
CD番号3-7703-2Y6x2


このCDを聴いた感想です。


 はい、まずは上記の録音年にご注目ください。
 1999年の誤植ではありません。
 現在(2004年)から100年以上前、1800年代の録音です。
 CDには「メサイア関係で世界最初の録音」と書いてありますが、逆に、録音自体まだほとんど無かった筈のその時代から録音があった方に驚きましたよ。
 ついでに、このCDは、1920年代までに録音されたいろいろなメサイアの演奏を集めたもので、どれも全47曲の中のせいぜい2,3曲を録音したに過ぎませんが、全部集めるとCD2枚分に目一杯入るぐらいの量があります。その大半は機械録音による古いもので、ビーチャムの全曲以前に、これだけ多くの録音があったというのも初めて知りました。
 で、肝心の世界最初の録音ですが、まあ、予想通りとはいえ恐ろしく貧相な音です。
 まさしく、蚊の鳴くような声というのはこういうものか、という見本みたいなもので、聞こえるだけありがたいという代物です。
 雑音ばかりバチバチと盛大に入っていて、ほとんど雑音を聞くついでに音楽を聴いているような気持ちになってきます。
 当然、オーケストラのような多くの楽器の音が入るはずも無く、伴奏はピアノです。一応、聴いていてたしかにピアノの音だというのはよくわかるのですが、まあ、おもちゃのピアノといったところで、「ジャン」と力強い和音も「チャン」ぐらいの軽い響きです。
 それに較べると声の方はもうちょっと鮮明で、細かいニュアンスまで聞き取れます。といっても、いいとこ鉱石ラジオ並で、響きや重さは全く無く、なんだか力を入れず軽く流して歌っているみたいに聞こえます。テンポ自体は途中で一箇所大きく落とす以外は意外と一定のテンポを保っていますが(これは録音時間の制限もあるかもしれません)、歌い方はちょっと鼻にかけたような妙な癖があり、どっちかというとポピュラーソングとかコミックソングを歌っているような感じがします。
 この演奏の録音状態がいかに凄いかは、次のトラックに、1906年の録音が入っていたのですが、それですら、聴いた瞬間、「おお、これはもしかしてデジタル録音か!(←言いすぎ)」とその差に愕然としたことから、大体わかって頂けるのではないかと思います(笑)
 とんでもなく昔の録音ですから、当然時間制限も厳しく、あちこちカットして無理矢理つなげるのは当たり前の世界です。
 前奏からして無く、ピアノの和音一つが前奏代わりですぐ歌に入り、一区切りまで歌ったところでいきなり最後のフェルマータで音を伸ばすところへ大きくワープし、その後の後奏もピアノが「Every valley」のフレーズを少しゆっくり演奏して余韻を残し、それで終わりです。
 普通なら3分から3分半かかる曲を、1分40秒に縮めているのですから、いかにカットの嵐か推して知るべしといったところでしょう。
 一応、記念すべき世界初録音ですし、いろいろ興味深いし面白い演奏ではあります。
 とはいえ、とても人に勧められる録音状態ではありませんし、完全に好事家向けですね(笑)(2004/12/11)


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