指揮 | 小沢征爾 |
演奏 | フランス国立管弦楽団 |
録音 | 1982年4月2・3・5日 |
発売 | 東芝EMI |
CD番号 | CC30-9081 |
ビゼーの交響曲という曲は、オーボエが非常に目立つ曲です。 四つの楽章全てに少なからぬソロがあり、なかでも第2楽章はオーボエ協奏曲ではないかと思えるほど、メロディーを延々と一人で吹きつづけるソロがあります。 このCDはそうではありませんが、CDによっては、指揮者の名前と並んで、わざわざオーボエ奏者の名前を明記しているものまであるほどです。 わたしは、ビゼーの交響曲の演奏を10種類程度しか聴いたことがありませんが、その中ではオーボエソロがもっとも素晴らしいと感じたのがこの演奏です。 とにかくまず音色が良いのです。 フランスのオーケストラですが、60年代ぐらいまでの横に平べったいが華やかな音色からはかなり変化しています。 響きは横ではなく縦に昇っていて、原色バリバリの華やかさというよりも、水彩画の中間色のような透明感があります。 その一方でフランス的な明るさと軽さも残していて、まるで羽毛が日光を浴びながら風に乗ってフワッと舞い上がっていくかのようなイメージを感じさせます。 さらに音色だけでなく、歌わせ方も良さの一つです。 ビブラートを非常にうまく使っていて、ただ音を長く伸ばしていても、そこから豊かな表情が読み取れます。しかもこのビブラートは、かかっているといっても、大げさにしたりせず節度を保っているため、清々しく気品があります。 決して、感情に直接訴えかけてくるような切々とした歌わせ方ではないのですが、このさわやかな歌わせ方は、かえって素直に心に残りました。 オーボエ以外の全体での印象としては、若々しさが強く感じられます。 もともと曲自体が、ビゼーが17歳の頃に書いただけあって全体的に若々しいのですが、この演奏は、その特徴をストレートに表現しています。 音楽に勢いがあり、スピードのある音でどこまでも真っ直ぐに進んでいきます。 また、フランスのオーケストラの特質が上手く生きていて、響きは若干薄めなのですが、その分軽く瑞々しく、人生の重荷とは無縁の、若者らしいフットワークの軽さと快活さが存分に感じられます。 とにかく、響きに変な重量感が無く軽いことは大きく、肩の力を抜いてテンポ良く軽やかに流れるように音楽が進んでいきます。 さらに、これは小澤征爾の上手さでしょうか、音楽にスピード感や勢いがあっても、荒くなったりせず、ちゃんとコントロールされていて、しっかりとまとまっています。 そのまとまり方といったら、いやもう、およそフランス国立管の演奏とは思えないほどです(笑) 実は、わたしは小澤征爾のCDはめったに買っていません。 今までに何枚か買ったことはあったのですが、それがなぜかことごとく面白くなく、生気の抜けたような演奏ばかりでした。 たまに映像で見かけるライブの演奏は、熱気を感じさせる演奏が多かったので、そういう演奏もすることは知っていたのですが、CDのようなスタジオ録音ではライブのような熱気は出せないものと思っていたのです。 しかし、その考えも、このCDを聴いて少し変わりました。 この演奏はスタジオ録音ですが、面白く、生気溢れる演奏です。 スタジオ録音でもこのような演奏をしているのであれば、もうちょっといろいろ買ってみようかな、という気になってきます。(2003/10/18) |