G.ビゼー 「カルメン」組曲

指揮ウラディミール・ゴルシュマン
演奏セントルイス交響楽団
録音1954年1月19日
カップリングラロ スペイン交響曲 他
発売EMI(Capitol)
CD番号CDM 7243 5 66552 2 5


このCDを聴いた感想です。


 カルメンの組曲にはビゼー本人が編纂した第1組曲と友人のギローが選曲と編曲を手がけた第2組曲とがあります。
 第1組曲は各幕の前奏曲で全4曲(第1幕への前奏曲を前半と後半に分けていれば5曲)。第2組曲はアリア等の見せ場を管弦楽に編曲したもので、全6曲で構成されています。ただし、ゴルシュマンは、第2組曲は「闘牛士の歌」と「夜想曲」の2曲をカットして4曲しかなく、第1、第2合わせて全8曲となっています。
 曲順も、第1と第2でそれぞれまとめて演奏するのではなく、前奏曲とその幕で演奏される第2組曲の曲とがセットで演奏され、その後に他の幕の前奏曲とその幕の曲とが演奏される形になっています。こういう形だと、例えば第2幕では前奏曲である「アルカラの竜騎兵」の次に「ジプシーの踊り」が続くという具合に、本来の歌劇と全く同じ進み方になるため、歌劇の方に慣れていても自然に感じられます。もっとも幕の順番は、第1幕の次が第3幕で最後が第2幕と、入れ替わっていたり、同じ幕の仲間がいない第4幕の前奏曲「アラゴネーズ」が第1幕への前奏曲の直後に入っていたりもしていますが。まあ、第3幕を先に演奏して、第2幕を最後に持ってきたのは、寂しく終わる「密輸入者の行進」や「アラゴネーズ」が最後では先細りで格好がつかず、もともと第2組曲でも終曲だった派手な「ジプシーの踊り」を最後に持ってくるためなのでしょう。

 演奏は、フランス系の指揮者らしく洒落た粋なものかと思いきや、ほぼ正反対でした。
 ビッチリと糊の効いたシャツみたいにきっちりとした演奏で、特に細かい音符には力が入っていました。ことさら強調しているのではないのですが、ポイントだけ押さえて細かい部分は適当に流してしまうのではなく、一音一音を丁寧に演奏していて、動きがくっきりと浮かび上がっています。
 パワーと勢いはあるので、手堅い大人しい演奏ではありませんが、その隙の無い様子は、カルメンの、歌劇でのタバコ工場で汚い格好をして働いて露骨に媚を売る女というイメージをさっぱりと払拭し、清潔なオフィスでスーツに身を固めテキパキと仕事をこなすキャリアウーマンになったみたいです。特に義理堅さは天と地ほどの差がありそうです。
 まあその分、柔らかさやロマンが薄く、第3幕への前奏曲や「ハバネラ」などは今一つ面白みに欠けるのですが、テンポの速い曲や激しい曲ではしっかりとしているだけに押し出しがよく、第1幕への前奏曲のよくまとまった締まった響きや、第1幕の「衛兵の交代」でのトランペットのファンファーレや行進での隅々までピシッと揃っているところなどは、気持ち良く聴けました。
 なかでも、これはと思ったのが終曲の「ジプシーの踊り」です。
 この曲は、冒頭から最後に向かってひたすらテンポアップするため、どうしても勢い任せで突き進みがちです。ゴルシュマンも、最初から速めのテンポでそこからどんどんテンポを上げて勢いを増していきますが、決して勢いに負けて崩れたりしません。勢いは増していきながらも最後まできっちりと演奏しており、その一体となった動きで聴く者を唸らせる迫力を生み出しています。
 さらに最後の最後に、木管だけでなく金管にまでトリルをさせてド派手に締めくくるのは、ゴルシュマン自身のアイデアなのでしょうか、なかなか面白い……というかビックリしました。たしかにインパクトは十分です。(2005/7/23)


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