指揮 | アルトゥーロ・トスカニーニ |
演奏 | NBC交響楽団 |
録音 | 1952年8月5日 |
カップリング | ビゼー 「アルルの女」組曲 他 「フランス管弦楽曲集」の一部 |
発売 | BMGジャパン(RCA) |
CD番号 | BVCC-9711 |
「カルメン」組曲には、各幕の前奏曲を中心とした第1組曲と、アリア等の歌を管弦楽に編曲した曲を中心とした第2組曲がありますが、この演奏は『基本的に』第1組曲です。 えーと、なぜわざわざ『基本的に』と括弧書きしたかといいますと、上記のタイトルを見て頂けるとおわかりのように、これはただの「カルメン」組曲ではなく、『トスカニーニ編曲版』なのです。 とはいえ、編曲を施してあるのは一部だけで、むしろ原曲そのままのところの方が多いぐらいです。 細かい部分はさておき、大きな変更点は3点あります。 1点目は曲の順番。 2点目は第1幕への前奏曲(アンダンテの方)と第3幕への前奏曲との繋ぎにハープのカデンツァが入っていること。 そして、3点目が、第1幕への前奏曲(アレグロの方)が大幅に編曲されていることです。 まず、1点目の曲の順番については、アラゴネーズ(第4幕への前奏曲)と第1幕への前奏曲(アンダンテの方)が入れ替わっています。 ただ、曲の順番を入れ替えることは、指揮者によっては結構やっているため、あまりトスカニーニ独自というほどではありません。 2点目のハープのカデンツァは、さすがに他の演奏では聞いたことがありません。 これは、第1幕の前奏曲が終わると同時に、ハープがアルペジオ(分散和音)入ってきて、バラバラと弾き倒して行きながら、第3幕への前奏曲の冒頭のハープのアルペジオに繋いで行くというもので、なかなかおもしろいアイデアです。 ただ、個人的には、このハープのアルペジオは、聴いているとだんだん「胡桃割り人形」が思い浮かんで来て、「花のワ〜ルツ〜♪」と続けたくなってしまうのですが、こんなしょーもないことを考えるのはたぶんわたしだけでしょう(笑) さて、3点目の第1幕への前奏曲(アレグロの方)の編曲ですが、これは原曲と大幅に違っています。 言ってしまえば、これは第1幕への前奏曲ではありません。 早い話が、この曲は第4幕の中の闘牛士達が闘牛場へと行進して来る場面の音楽なのです。 この場面の音楽というのは、メロディー自体は、第1幕への前奏曲と同じ物が使われています。 しかし、前奏曲と大きく異なるのは、闘牛士の行進を見ようと沿道に押しかけた観衆達の合唱が入っていたり、なにより、前奏曲ではトリオの部分は「闘牛士の歌」だけだったのが、他にも前奏曲には無い様々なメロディーが表れるところです。 個人的にも、この場面は原曲の歌劇の中でも最も好きな場面の一つで、非常に華やかでありながら、堂々とした雰囲気があります。 特に、トリオ部分に出て来る、前奏曲には無かった「勇敢なるチューロ(牛を追う勢子です)に敬意を捧げよう〜(後略)」という歌詞で歌われるメロディーが大好きなので、これが入っているだけでも嬉しかったです。 話が少しそれてしまいましたが、この第4幕の音楽は原曲では合唱が入っていましたので、当然、管弦楽用に編曲されています。 まあ、合唱を他の楽器に割り当てているだけような感じなのですが、雰囲気としては、やはり歌が入っている曲を管弦楽用に編曲した第2組曲に近くなっています。 幸い、元の合唱が割とバックのオーケストラと重なっている部分が多かったため、それほど違和感はありません。 ただ、この編曲には、一つどうしても気になるところがあります。 この音楽は、原曲では、闘牛士達が闘牛場に行進してきてそれで終り! ……というわけではありません。 そのまま切れ目なしに次の場面へと続いていますので、この組曲では終結部を作って途中で終わらせています。 しかし、この終結部というのが、これがまあ、いかにも「取って付けましたぁ!」という感じなのです。 無理矢理に、しかも唐突に終わっています。 第4幕の音楽を使っていること自体は嬉しいのですが、さすがにこれはちょっと「なんだかなぁ」という気になってしまいます。(2001/7/27) |