G.ビゼー 歌劇「カルメン」より抜粋

指揮不明
出演カルメン:ジェラルディン・ファーラー
ホセ:ジョヴァンニ・マルティネッリ
演奏不明
録音1914年12月9日・1915年5月17・19日
発売Pearl
CD番号GEMM CD 9420


このCDを聴いた感想です。


 古(いにしえ)の時代、ある伝説的なソプラノ歌手がいた。

 その名を、『ジェラルディン・ファーラー』

 …………

 はい、今回は、SPどころか電気録音以前の機械録音頃活躍していたソプラノ歌手のジェラルディン・ファーラーの録音を取り上げます。
 といっても、ジェラルディン・ファーラーをご存知無い方も多いと思います。
 知っているとしても、おそらく、あらえびす氏の著作「名曲決定盤」(中公文庫)で、褒め称えてあるのを読んで、知った方がほとんどではないでしょうか。
 かくいうわたしも、「名曲決定盤」を読むまで、そんな歌手がいたことなんて全く知りませんでした。
 ファーラーは、「名曲決定盤」では『巨匠の回顧』という項目に入れらていて、「名曲決定盤」が書かれた当時(1939年)ですら、過去の人という扱いになっているため、恐ろしく昔の人というイメージが強いのですが、実は、生まれは1882年と、指揮者のストコフスキーやヴァイオリニストのフーベルマンと同年齢で、メンゲルベルクやワルターやモントゥーなんかよりも若かったりします。
 さらに亡くなったのは1967年ですから、ストコフスキーほどではないにしても結構長生きしています。
 結局、この人が早くに過去の人になってしまった最大の理由は、ひとえに声楽家という点にあります。
 声楽家は指揮者や器楽奏者と異なり、遥かに早く衰えが来ます。ましてやソプラノではますます全盛期は短いものです。
 そのため、ファーラーの録音は、ほとんど機械録音時代(1925年以前)に限られ、現在は省みられる事が無くなってしまったというわけなのです。

 さて、話を演奏の方に戻します。

 今回取り上げた、歌劇「カルメン」の抜粋は、カルメンからソプラノの聴かせ所6曲を抜粋したもので、曲目は以下の通りです。

 1.ハバネラ(第1幕)
 2.セギディーリャ(第1幕)
 3.ジプシーの歌(第2幕)
 4.アルカラの竜騎兵とカスタネットの踊り(第2幕)(ホセ:ジョヴァンニ・マルティネッリ)
 5.一緒に山に行こう(第2幕)
 6.カルタ占い(第3幕)

 ちなみに、たしかに録音は機械録音であり電気録音に較べると落ちるのですが、こういう歌というのは、機械録音でも割と捕え易いらしく、かなり鮮明にニュアンスまで聴き取る事ができます。
 ファーラーの声は、大人の魅力に満ちているのですが、それなのにいやらしさを感じさせないようなさわやかな声です。
 また歌い方は、20世紀の初めの頃らしく、非常にドラマチックで、音の出だしやフレージングを変化させての盛り上げには眼をみはりました。
 特に、テンポの変化はかなり激しく、現在ではまずやらないであろうと思われるぐらい大きく動かしています。
 もう一つ、CDからはわかりませんが、ファーラーは容姿も抜群だったそうで、これだけ揃えば当時絶大な人気を誇ったというのもわかるような気がします。

 ついでに書いておきますと、歌うのは基本的にファーラー一人だけで、例えば3曲目のジプシーの歌なんかは、本来は三重唱なのですが、他の二人は出てこないで、全部カルメン一人で歌っています。
 6曲目のカルタ占いに至っては、カルメンに歌がある中間部のみしか録音がありません。
 4曲目のアルカラの竜騎兵とそれに続く叙唱を、ホセ役のジョヴァンニ・マルティネッリが歌っているのが唯一の例外です。
 まあ、この録音は、カルメンを聴くというより、ファーラーを聴くというのがメインですから、これで良いのでしょう。

 さて、今まで歌についてばかり書きましたが、この歌の伴奏は、ちゃんとオーケストラがやっています。
 しかし、この伴奏のオーケストラの方は、モロに機械録音の不利益を蒙ってしまっています。
 つまり、音があまりに貧弱すぎて、良い悪いを言えるようなレベルではないのです。
 わずかに聞こえる音を雑音の中からなんとか選り分けて聴いた限りでは、結構上手いと思いますが……
 ただ、このオーケストラ、リーフレットにはどこのオーケストラで何という指揮者なのかが全く書いてないのです。
 そのため、伴奏しているオーケストラと指揮者の正体は全く不明なのですが、そもそもこの録音は、オーケストラを聴くものではなくて、あくまでもジェラルディン・ファーラーを聴くための録音ですから、別に誰が伴奏してようとどうでも良いんでしょうねえ(笑)(2002/5/31)


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