指揮 | ロリン・マゼール |
出演 | カルメン:アンナ・モッフォ ホセ:フランコ・コレルリ 他 |
演奏 | ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団 |
録音 | 1970年 |
発売 | BMG(RCA) |
CD番号 | 74321 25279 2 |
音楽による演出を最も過剰にした演奏、と言えるかもしれません。 この録音は音のみで映像はありません。しかし、映像が無さを補って余りあるほどの派手な音楽作りをしています。 パーカッションを強調したバランス、速い部分はより速く、遅い部分は必要以上に遅くしたテンポ、場合によっては楽譜を変更することもしています。 楽譜を変更している部分で最も目立つのは、第4幕の前奏曲のテーマが出てきてから闘牛士の歌のテーマにつながる一連の部分です。 闘牛士の歌のテーマが出てから、前奏曲のテーマに戻った部分にホルンのトリルを加えたり、さらには編成に無いサスペンディッド・シンバルを入れています。 たしかに派手なんですが、とてもカッコよく聴こえます。 また、この演奏はシーンの間をレチタティーボでつなぐグランド・オペラ版ではなく、セリフでつないでゆくいわゆるアルコア版なのですが、セリフは感情たっぷりに歌われ……いや、語られます。 第1幕の女工同士の喧嘩の場面は、悲鳴や叫び声があまりにも生々しすぎて、オペラというよりもテレビドラマでも見ているような気になってきます。 ただ、派手な演出をした演奏だからといって、放埓というわけではなく、逆に締まった印象を受けます。 全曲を通じてマゼールの意志が隅々まで行き渡っていて、良くコントロールされているように聞こえます。 ということで、自然体という感覚からははるかにかけ離れた演奏となっている一方、おもしろさや退屈させないという点では随一のものになっています。(2000/6/16) |