F.v.スッペ 喜歌劇「詩人と農夫」序曲

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1932年5月11日
販売及び
CD番号
Pearl(GEMM CDS 9070)
東芝EMI(TOCE-8191〜99)


このCDを聴いた感想です。


 この演奏は、非常に健康的な明るさに充ちています。
 もともと曲調からしてそうなのですが、メンゲルベルクの演奏は、特にメロディーにその特徴が良く表れています。
 この「詩人と農夫」という曲は、大雑把に分けて、冒頭からチェロのソロが終わるまでのかなりゆったりとしたAndante maestosoの部分と、Allegro strepitoso(4/4拍子)とAllegro(2/4拍子)の速い部分と、Allegretto(3/8拍子)のちょっとゆったりとした部分の三種類の音楽があるのですが、その中で、2拍子と4拍子系のAllegroの部分は、音を短く切って、軽快で推進力に富んだ音楽にしているだけでなく、下のほうから上へ駆け上がって来るだけのちょっとしたメロディー一つをとっても、何かこう人をわくわくさせるような楽しさがあるのです。
 これが冒頭のAndanteや3拍子系のAllegrettoになると、さらに優雅な雰囲気も加わってきます。
 曲の冒頭では、金管の優しげなファンファーレの後、チェロのソロが延々と続くのですが、このチェロのソロの音色が実に明るく優雅なのです。
 もちろん曲調もあるのですが、この歌わせ方は、テンポをしきりに揺らしてポルタメントも自在に駆使したもので、少し不健康な感じがして、まるで有閑マダムを髣髴させるかのようなアブナイ魅力があります(笑)
 これが3拍子系のAllegrettoになると、優雅にして明るく健康的な雰囲気がますます強くなってきます。
 ただメロディーを歌わせるだけではなく、テンポを緩める部分は(楽譜にもrallentando書かれているのですが)、大きくテンポを落として山を作り、ビブラート大きくかけ、その上にポルタメントをうっすらとまぶす事で、健康的な雰囲気を保ちながら、優雅な情緒をたっぷりと感じさせてくれる音楽になっているのです。
 さらに伴奏も、ウィンナーワルツのように、一つの小節の中で微妙にテンポを揺らしたり、2拍目と3拍目に強弱の差をつけたりして優雅な雰囲気をより高めています。

 メンゲルベルクには、スッペの演奏は、スタジオ録音とライブの両方を通じて、この「詩人と農夫」序曲の一曲きりです。
 実際のところ、メンゲルベルクが実演でスッペの曲をより取り上げていたかどうかはわかりませんし、イメージ的には、メンゲルベルクとスッペというのはあまり結びつかなかったのですが、この演奏を聴くと、「なるほど。スッペに対するメンゲルベルクのこういうアプローチも、スッペの曲の魅力をちゃんと引き出しているんだな」と納得できました。

 余計な話かもしれませんが、実はメンゲルベルクの演奏にはカットがあります。
 曲の終わる少し前の、ある1フレーズの20小節間で、演奏時間から考えると、あながち収録時間の技術的な制限とばかりとも思えないのですが、なぜかカットしています。
 もしかしたら、カットした部分は、そのまた前のフレーズの繰り返しみたいな部分だから、不必要と判断したのかもしれません。
 ただ、知らずに聴いていれば、カットされている事がわからないくらい、つなぎはスムーズです。(2002/5/24)