F.シューベルト 交響曲第9番 ハ長調 <ザ・グレート>

指揮ジェイムズ・レヴァイン
演奏シカゴ交響楽団
録音1983年7月
発売Grammophon
CD番号413 437-2


このCDを聴いた感想です。


 この演奏の魅力は、音が小さい(弱い)ピアノの部分にあると思います。
 柔らかくピアノの枠をはみ出さない範囲でまとまっていながら、メロディーなどの動きは驚くほど生き生きとしています。フォルテの部分を音量を下げて聞くのと違って、耳に聞こえるのは同じくらいの音量でもピアノの場合は距離が近く、動きが間近に感じられます。まるで手のひらの上に超小型の愛玩犬を載せているみたいで、顔を近づけると(音量を上げると)、 表情がくるくると多彩に変化していくのが手に取るように分かり、可愛らしいぐらいです。
 演奏する方も非常に細かくコントロールして微妙な変化を出しているわけですが、繊細とは少しニュアンスが異なります。繊細というと神経質でちょっと病的な儚さをイメージするのですが、この演奏はそういう不健康なところは無く、ピアノでも芯は力があり跳ねるように活発です。しかし決して強くはなりませんし、いくら音量を上げてもピアノだとわかる強さ(弱さ)の中で跳ねているのが良いのです。動き自体は生き生きとしているのに開放されたフォルテと違い凝縮された密度の濃さがありますし、緊張感も息苦しくない程度の適度に保たれており、小さくても光り輝くダイアモンドを見ているかのように心地よい興奮を感じてきます。
 ピアノからだんだんクレッシェンドしてフォルテに向かうところも、ピアノの枠が外れ強さが増していく様子にどんどん気持ちが高ぶってくるのですが、実は到達点であるフォルテの部分はちょっと当てが外れました。
 シカゴ交響楽団というイメージから、特に世界最『強』との呼び声高い金管などは分厚い音で圧倒的な迫力を伴って鳴り響くものかと思っていましたが、ほとんど芯だけ残して響きを取り去った締まった音で、どちらかというと細い音に聞こえました。これもやはりホームグラウンドの、響きが無いと有名なシカゴ・オーケストラホールの影響なのでしょうか。実際にこの録音がそのシカゴ・オーケストラホールか定評のあるメディナ・テンプルかはたまたそれ以外のホールで行われたのかはCDのリーフレットからはわかりませんでしたが、こと金管に関しては、ホールの響きをあてにしたりせず、音の芯だけで勝負しているように聞こえます。
 それがシカゴ響の特性ではなく、レヴァインの指示によるものということも当然考えられます。細いとはいえ、一点に集中していますから密度は濃く、力強さもあるので、もともとそういう響きを狙っていたのかもしれません。むしろその点を評価される方もいらっしゃると思いますが、わたしの好みではありませんでした。
 わたしにとって、この演奏はとにかくピアノ。ピアノだけで他の好きな演奏に匹敵するほど強く印象付けられました。(2005/5/21)


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