指揮 | カール・シューリヒト |
演奏 | シュトゥットガルト放送交響楽団 |
録音 | 1956年3月20日 |
カップリング | ウェーバー 「オイリアンテ」序曲 |
販売 | archiphon |
CD番号 | ARC-2.11 |
シューリヒトというと、あまり極端な表情を作らず、ちょっと聴いただけでは無造作と思えるほど淡々と音楽を進めて行くのですが、なぜか聴いていて退屈する事はあまりありません。 この演奏を聴いていると、そんなシューリヒトの魅力の秘密がちょっとわかったような気がします。 この曲の第1・4楽章は、序奏部を除くと概ね速くて、しかもタッタタッタという一定のリズムが全体を貫いているため、楽譜に指示が無い限りは、どの指揮者でもあまりテンポを変えたりはしていません。 速い遅いの差はあっても、大抵の場合は一定のテンポをキープしていて、その中で大きくテンポを動かすことは稀です。 シューリヒトも、例外ではなくほぼ一定のテンポを保っています。しかも速いテンポで。 その上、濃厚に表情付けする方ではありませんから、音楽がサラッと流れて行き、印象に残らないようなイメージですが、実際には印象に残らないどころか聴いていて強く心に残る演奏です。 では、一体どの部分がそれほどまで印象に残るかと言いますと、それは『微妙な』表情です。 聴いている人をむせさせるぐらい強烈な匂いを放つような歌わせ方ではなく、メロディーの端々にチラッチラッと見せる微妙な表情の変化が、爽やか風の中のほのかな香りという感じで、かえって強く印象に残るのです。 そして、この表情付けのタネはアクセントにあります。 ポイントポイントを押さえ、必要以上につけすぎない、またそのアクセントも重いものから軽いものまで場面場面にピッタリあったものが選ばれています。 このアクセントの上手さがシューリヒトの他に代え難い魅力の一つだと思います。 さらに、これは演奏するオーケストラの技術力にも影響されますが、オーケストラから、締まっているが決して窮屈ではない音とキビキビしたリズムを引き出せるのもシューリヒトの素晴らしさでしょう。 実際のところ、上記の表情付けを支えているのは、この締まった音とリズム感なのですから。 ところで、上記には速いテンポの部分について書きましたが、実は第1楽章の序奏部だけは、シューリヒトにしては珍しいことに濃厚な表情付けをしています。 テンポにしても、主部の速い部分との対比にするためなのかどうかはわかりませんが、かなり遅く、メロディーの歌わせ方もビブラートを思いっきり効かせた粘っこいものです。 しかし、それでも表情付けの主体はあくまでもアクセントにあるところが、シューリヒトの特徴を表しているのでしょうかね(笑) 録音の方は、モノラルといえども1956年の録音だけあって、非常に鮮明です。 ただ惜しいのは、途中何度かレコードの針音のような(…というかそのものでしょう)ブツブツという雑音が入ることで、これが無ければ完璧と言って良いほどです。(2001/11/16) |