F.シューベルト 交響曲第9番ハ長調<ザ・グレート>

指揮ジェフリー・テイト
演奏ドレスデン国立管弦楽団
録音1986年2月26日〜3月2日
販売東芝EMI
CD番号CC33-3660


このCDを聴いた感想です。


 この演奏、繰り返しを全部やっています。
 さらに、テンポも結構遅めです。
 したがって、トータルでは63分もかかっています。
 長いことで有名なグレートですが、ここまで時間もかかる演奏もなかなか無いんじゃないんでしょうか。

 ここまで長い演奏なのに、テンポもずっとイン・テンポに近く、急激なアッチェルランドをかけて盛り上がりをつくったりとか、部分部分で大きくテンポを緩ませて見せ場をつくったりとか、そういった演出をほとんどやっていません。
 ここまでの論調だと、この演奏はひどく単調で、63分もの間聴き通すことが、気が遠くなるくらいの苦行のような印象を受けられたかと思いますが、実はそうではありません。
 実際に聞いていると、繰り返しを全てやって63分もかかっているとは思えないくらい聴いているのが楽しくかつ短く感じられます。
 表面上は、ただ楽譜通り演奏しているようにしか思えないのですが、なぜ退屈しないのでしょう?

 もちろん、曲自体をわたしが好きという理由もあるのでしょうが、他の人のより短い演奏では、退屈に感じる演奏もあります。

 テイトの演奏が、飽きさせず短く感じられる理由の一つは、音を短めに切っているということがあります。
 わたしだけかもしれませんが、音が短めに切ってあると、ピシッとしまった雰囲気になり、ダラダラした倦怠感がないため、テンポが遅くとも小気味よくテキパキと音楽が進んでいくように感じられます。

 そして、もう一点は、ダイナミクスとアクセントです。
 これは新しいレコーディングの利点でもあるのですが、ダイナミクスに大きな幅を作って、音楽に盛り上がる部分と抑えた部分での波を起こしていることがよくわかります。
 これだけでも緊張と弛緩の繰り返しで飽きないのですが、これに鋭くアクセントを入れることで、新しい変化が生み出しているのです。
 ここでテイトの上手いところは、ダイナミクスの変化は基本的に緩やかなもので、不自然な急激な変化にはしていないことです。
 ダイナミクスの波があるにもかかわらず緩やかなため、鋭いアクセントが生きてくるのです。
 「そんなことは、楽譜に書いてあるぞ!」と言われますとその通りなのですが、その微妙なバランスはテイト独自のものだと思います。

 わたしはグレートは10種類ぐらいしか聴いたことがありませんが、その中では最も好きな演奏です。
 わたしが好きな演奏の中では、珍しく、皆様に自信を持ってお勧めできる演奏!……と言いたいところですが、どうでしょうねぇ〜 「退屈!」と言われてしまったら、「ま、まあ、そう思われても納得できる演奏かも…」と思いますしね(笑)(2000/12/27)