F.シューベルト 交響曲第8番 ロ短調 <未完成>

指揮ホルスト・シュタイン
演奏バンベルク交響楽団
録音1986年
カップリングシューベルト 交響曲第9番 <ザ・グレイト>
発売BMG(RCA)
CD番号74321 21282 2


このCDを聴いた感想です。


 なんだか後ろ髪を引かれるような演奏です。
 キレの良い演奏というのとちょうど正反対で、音の最後を引張り気味にして、かなり余韻を持たせています。
 音の出だしも、アクセントがついている音でも叩くような硬い音ではなく、音を置いてそこにグッと体重をかけるような重い音で、音の出だしから終わりまでじっくりと力を込めて演奏しています。
 その特徴がもっとも上手く生かされているが第1楽章の第2主題です。
 まず、第2主題に入る前の第1主題からのつなぎから、雰囲気があります。
 この部分はファゴットとホルンの音だけ残り、それが最後の小節で和音に分かれて四分音符で動いているだけなのですが、テンポを一段階落として最初に伸ばしている音の長さを長くして、一拍ずつ確かめるように和音を移っていくことで、それまでの短調で緊張感のあった雰囲気をゆったりと和らげていきます。
 第2主題に入ってからはさらにじっくりと力が入ります。
 テンポ自体は、つなぎの時に落としたテンポを戻し、いくぶん速くなりますが、決して慌てたりしません。
 まず、音の出だしは、アタックをつけていないんじゃないかと思えるくらい滑らかに入ってきます。そのまま、水の中を泳ぐように大きくゆったりと歌っていき、メロディーの最後は、スパッと切ったりせず、次のフレーズに掛かりそうになるぐらい余韻を持たせています。
 第1主題とは違い明るい長調ですが、明るいというよりも暖かい音楽です。第1主題の緊張感の高さとは対照的に、落ち着いた安心できる響きが広がっています。
 しかも、落ち着いてはいても、気が抜けているわけではなく、ゆったりと進みながらそこには力が感じられます。象のように重く巨大な物体がじわじわと進んでいくみたいに、どっしりと安定した力強さがあります。
 スピード感とかキレの良さとは完全に対極のじっくりと力の入った演奏ですが、これだけ後ろに引っ張るわりには、クドさはほとんど感じません。
 同じように後ろに引っ張る19世紀生まれの大指揮者たちの演奏、特にメンゲルベルク辺りの演奏が、良くも悪くもクドさを感じるのとは、一線を画しています。
 おそらく、テンポは遅いものの、第1主題から第2主題へのつなぎのような一部を別とすれば、途中でテンポを動かすことがほとんど無いため、余韻を残しても鼻につかなかったのではないかと思います。

 個人的には、この第2主題の印象があまりにも強く、他の部分はどうも印象が薄くなってしまいました。
 第2楽章も、重さと柔らかを兼ね備えた演奏で、スタンスはほとんど変わらないのですが、テンポが多少速く(演奏時間が11分強。ちなみに第1楽章は繰り返し有りで15分近く掛かっています)、すっきりというか、わりとあっさりとしています。
 それに較べて、第1楽章の第2主題以外の部分は、第2主題ほどではないにしてもじっくりと力を入れているのがわかりやすく表れています。重いことには違いはありませんが、第2主題の柔らかさの代わりに緊張感があり、響きも硬く毅然としています。
 演奏しているバンベルク響は、響きに透明感が出るほど揃っているわけではなく、プレイヤーの個人の技量も、もちろんプロとしては十分ですが、際立って上手いというわけで無いようです。しかし、全体での響きの重さや、横の流れのつなぎ方の上手さを聞くと、まとまりの良さは、やはりドイツのオーケストラらしいと思いました。(2006/10/21)


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