F.シューベルト 交響曲第8番ロ短調<未完成>

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1942年11月
カップリングシューベルト 交響曲第9番<ザ・グレート>
MENGELBERG EDITION Vol.1
販売phono-museum(Telefunken)
CD番号PMCD-1


このCDを聴いた感想です。


 この演奏の特徴は第1楽章の第2主題に濃く表れています。

 この第2主題は、厳しい第1主題と対照的にゆったりとした優しげなメロディーなのですが、このメロディーを、これほどまでに過剰に歌いこんだ演奏は、他に無いでしょう。
 テンポからしても、フレーズ全体の中で大きな単位での伸び縮みがある上に、小節の中でも小さな単位の伸び縮みがあり、さらにそれにダイナミクスの微妙な変化が加わります。
 まるでブランコに乗っているかのような大きなうねりです。
 もちろん、この部分はスピード感とか前に進んでいこうとする力はあまり感じられず、聴く人によっては、フレーズ感を損ねているという印象を受けても、全く不思議ではありません。
 ただ、夢の中のような現実離れした浮遊感や倦怠感は無く、あくまでも活力に溢れた現実世界の一部というイメージですが。

 また、その一方で、スタッカートで短めに音を切っていく全合奏の部分などは、一定のキッチリとしたテンポ感で音楽を進めていきます。
 音も丸く短く切り、キレがいいスピード感溢れた……とまではいいませんが、前へ前へ進んでいこうとするエネルギーに充ちています。
 ただ、フレーズの最後に大きなリタルダンドが入るところは、まあ、いつものメンゲルベルクといったところです(笑)。

 第2主題のようなゆったりした部分と、全合奏のような刻んでいく部分の差を大きくすることで、この演奏は多彩な表情が楽しめる演奏になっています。

 第2楽章も、基本的には第1楽章と同様です。ただ、基本となるテンポが遅めなので、よりゆったりとしているという違いはありますが。


 この演奏は、わたしの知っている限りでは、4種類CDが出ています。
 今回取り上げたphono−museum盤以外では、最近話題の10枚セットのHISTORYシリーズの中の1枚(205255-303)、Pearl盤(GEMM CD 9154)、Biddulph盤(WHL 039)があります。
 音としては、どれも甲乙つけがたい……というか、あまり差がありません。
 強いてあげれば、今回取り上げたphono−museum盤が、それぞれの楽器の音が多少クリアに聞こえます。ただ、その代わり雑音は他のCDの3倍増ですが(笑)
 残りの3枚については、差があっても、本当に微々たる物で、たいした違いではありません。
 ただ、これは再生装置の問題もあるので、聴く人によっては、大きな差が出る可能性もあります。
 そもそも、この録音、もともと音が良くないようです。
 ヒドイ傷があったりするわけではないのですが、1940年代のスタジオ録音にしては、音の分離が悪く、レベルの調整も上手くいっていないようです。
 ピアノの部分は割と良いのですが、フォルテになると急に楽器間の分離が悪く、グシャっとした音になり、音が割れたり、勝手に音量レベルが低くなったりします。
 ……もっとも、最後のレベルの問題は、復刻の際の編集のせいかもしれませんが。
 メンゲルベルクが残した未完成は、この演奏以外にもう一種類ライブで録音した演奏があるのですが(PHILIPS 1940年)、こちらの方はさらに録音状態が悪いのです。
 どうもこの曲に関しては、録音に恵まれなかったようです。

 ところで、先ほどあげた4種類のCDの中で、実はBiddulph盤だけ、リーフレットに表記されている録音年月日が異なっているのです。
 他の3枚が全て1942年11月と表記してあるのに対して、Biddulph盤のみは、1943年6月17日と書いてあります。
 レコード番号とマトリクス番号が同じなので、同じ録音のはずなのですが(事実、演奏自体は同一です)、なぜか録音日のみ違っています。
 Biddulphは、以前、ブラームス交響曲の時にも録音日が他と違っているのに気が付きました。
 単純なBiddulph側のミスなのか、それともBiddulphだけ独自の調査で正確な録音日を特定したのか……一体、何でしょうかねぇ?(2001/3/2)