F.シューベルト 「ロザムンデ」間奏曲第3番・バレエ音楽第2番

指揮エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1940年7月7日
カップリングJ.S.バッハ 二台のチェンバロのための協奏曲 他
「Eduard van Beinum Concertgebouw Orchestra LIVE The Radio Recordings」の一部
販売Q DISC
CD番号97015


このCDを聴いた感想です。


 ついに買ってしまいました。

 このCDの事です。

 このCDは、ヴァン・ベイヌムの放送録音集で、CD11枚組み+DVD1枚という大量の収録数を誇り、それと同時に、お値段の方も1万1千円を突破するという、そりゃ、1枚あたりにしたら千円強とリーズナブルにしても、さすがに購入するにはかなり勇気がいるセットものです。
 わたしも、メンゲルベルクの後任ということで、ヴァン・ベイヌムには注目していましたが、それでも、万札を吹っ飛ばしてまで買うのはちょっと躊躇していました。
 これと同じシリーズには、メンゲルベルクのも発売されていまして、こちらの方は、何の迷いも無く購入してしまいましたが(笑)、メンゲルベルク以外の指揮者まで見境なく手を付けていたら、資金がいくらあってもとてもじゃないですが足りませんし、そもそもメンゲルベルクよりもヴァン・ベイヌムのセットの方が先に発売されていたのにもかかわらず、ずっと迷い続けていました。
 ところが、先日、たまたまよく行く中古CD屋に行ったところ、このセットが、8千円を切るという破格(?)の値段で売っていたため、ここで逃すともう二度とこの値段で売られている事も無いかと思い、清水の舞台から飛び降りる気持ちで、エイヤッと買ってみました。
 結果は……個人的には大当たりでした。
 といっても、まだ一部しか聴いていないので、演奏の良い悪いはまだ判断できる段階ではなく、わたしが注目したのは、演奏の内容云々以前に、収録年代です。
 このセットには、ヴァン・ベイヌムの戦前・戦中の録音が多く含まれていたのです。
 これまでCDとして耳にする事が出来たヴァン・ベイヌムの録音は、わたしが知る限りでは、全て戦後、要するに1945年以降の演奏だけでした。
 つまり、メンゲルベルクが戦犯として追放され、ヴァン・ベイヌムが完全にトップに立ってからの録音ばかりだったのです。
 それが、このCDによって、初めて1945年以前の、まだメンゲルベルクが全能の独裁者として君臨していた頃のコンセルトヘボウ管とのヴァン・ベイヌムの演奏に接する事ができました。
 いわば、「メンゲルベルク時代のヴァン・ベイヌム」といったところです。

 今回採り上げた「ロザムンデ」は、非常に都合が良い事に、ほんの半年ぐらいしか違わない時期にメンゲルベルクも録音しています。聴き較べるにはまたとない好条件といえるでしょう。
 で、較べて聴いてみた結果ですが、思ったよりメンゲルベルクの影響が強く表れているようです。
 というか、最初聴いた時は、本気で一瞬メンゲルベルクの演奏じゃないかと疑いました(笑)
 オーケストラの音色はビブラートをたっぷりかけた濃い音で、メンゲルベルクの培ってきた音そのものですし、メロディーの歌わせ方にも、随所にポルタメントがあからさまに掛かり、メンゲルベルクの支配の強さが伺われます。
 さらに、強弱の変動も激しく、戦後のヴァン・ベイヌムのテキパキと引き締まった、音楽の進め方からはちょっと想像できないくらい、ドロドロと濃厚で、狙ったような派手な表情付けをしています。
 また、テンポ変化も、メロディーの最後でテンポを大きく緩めておいて、次のメロディーに繋げるあたり、メンゲルベルクと同じ方向性の音楽だった事がわかります。
 ただ、同時期のメンゲルベルクの録音と較べると、メンゲルベルクの方がさらに極端です。
 メロディーの最後でテンポを遅くする部分にしても、メンゲルベルクは、それこそ音楽が止まりそうになるぐらいテンポを引っ張るのに対して、ヴァン・ベイヌムはそこまで極端ではなく、音楽の流れが途切れない程度の遅さに留めています。
 この流れの良さは、さすがに後年のヴァン・ベイヌムに共通するものがあり、特に、バレエ音楽第2番の方は、遅めのテンポながら、音楽の流れが良い上に音にもキレがあるため、重すぎず、軽快感がある音楽になっています。
 それにしても、ヴァン・ベイヌムにも、こんな演奏をしていた時期があったんですね。驚きました。

 ちなみに、この演奏が行なわれた時、当然まだメンゲルベルクは健在なのですが、ヴァン・ベイヌムがアムステルダムでコンセルトヘボウ管を指揮しているこの時期、メンゲルベルクが何をしていたかというと……実は、ベルリンにいたりします。
 この演奏会は、1940年の7月7日に行なわれましたが、この次の日の7月8日から、メンゲルベルクのただ一度のベルリン・フィルとのチャイコフスキー(交響曲第5番とピアノ協奏曲第1番)の録音セッションが始まっています。
 きっと、7月7日も、ベルリン・フィルとの演奏会とか、リハーサルでも行なっていたのでしょう。(2003/4/5)