F.シューベルト 「ロザムンデ」序曲・間奏曲第3番・バレエ音楽第2番

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1940年12月19日
発売及び
CD番号
日本フォノグラム(PHILIPS)(PHCP-3084〜97)


このCDを聴いた感想です。


 以前感想を書いたメンゲルベルクとニューヨーク・フィルとの序曲は、豪快なカットをしていましたが、このライブでの演奏はまともに楽譜通り演奏しています。
 音楽の流れもニューヨーク・フィルとの演奏に較べてずっと自然になっているのですが、実は、テンポ自体はこの演奏の方が大きく動かしています。また、ポルタメントもこちらの方が多めにかけています。
 しかし、聴こえて来る音楽はより自然なのです。
 テンポの変化は滑らかになり、無理がありません。例えば、強調する部分でテンポを落とす場合でも、ふんわりと着地するように遅くなっていき、そこからまた風に乗って飛び立つようにスゥッと速くなっていくのです。
 これは、序曲でもその雰囲気は十分に感じられますが、それ以上に雰囲気を感じさせるのが間奏曲とバレエ音楽です。
 特に間奏曲の方は、一定のテンポというものが無いのだろうかと思えるぐらい常にテンポが動いています。
 さらに、そのテンポの幅も広く、最も速い部分では早足ぐらいのテンポなのに、最も遅い部分ではほとんど立ち止まっていると言っていいほどゆっくりとしたテンポです。
 それに加えて要所要所ではポルタメントまで入っているため、ここまでテンポが変化し続けると音楽が重くなり、聴いている方としてはしつこさにもたれたりイライラしたりだれたりするのですが、この演奏からはそれが感じられません。いや、それどころか、逆にスッキリとした清涼感さえ感じられます。
 ここまで清々しく感じられる一番の要因は、もちろんテンポの変化が自然なことです。
 テンポの増減に、まるで呼吸するかのような一定のリズムが感じられるため、すんなりと馴染むことができるのです。
 さらに、もう一つの大きな要因にダイナミクスの変化があります。
 この曲では、ダイナミクスも一定を保つことなく、常に変化し続けています。
 このダイナミクスの変化が、テンポの変化と有機的に結びついているのです。
 ある部分では、テンポが遅くなるにつれてピアノになって行き、テンポが止まるんじゃないかと思えるぐらいに遅くなったところで、そのまま溶けるように消えていき、テンポがまた速くなっていくと共にまた姿を現してきます。
 また、逆にテンポが遅くなると共に音楽もどんどんフォルテになって行き、テンポが伸びきったところで最強音になり山場をつくる所もあります。
 このテンポとダイナミクスの変化が、どちらかが遊離することなく密接に結びつくことで、驚くほど自然な音楽の流れが現れるのです。

 バレエ音楽の方は、間奏曲のように常にテンポが変化しつづけるのではなく、一定のテンポを保つ部分も出てきます。
 しかし、それでもなおテンポは流動的に動く部分が多く、しかもこちらのテンポの変化は見せ場を作る方向に向かっています。
 テンポが遅くなる部分は一つの山場であり、テンポを遅くすることで緊張感を与え、聴く者を引き付けているのです。

 一方序曲には、テンポ変化の他にまた別の魅力があります。
 序曲のような速いテンポの曲で感じられる魅力……それは、アンサンブルの緊密さです。
 たしかに、この演奏は戦前のライブ録音ですので鮮明な録音とは言えません。
 しかし、弦楽器は比較的鮮明に録音されています。
 この弦楽器のアンサンブルには驚きました。
 もちろん揃っているという点でも凄いのですが、それ以上に強い印象を与えたのが緊張感です。
 とにかく、一音一音が充実しているのです。これはピアノのような音の小さい部分ほどよりよくわかります。
 あまり良いとはいえない録音からも、この緊張感だけはハッキリと伝わってきました。

 しかし、さっきからテンポが動く動くとしきりに書いてきましたが、よく考えるとこれってライブなんですよね。
 いくらメンゲルベルクがリハーサルと本番とをあまり変えないタイプの指揮者としても、本番でこれだけのテンポ変化にピタッとつけられるコンセルトヘボウ管の技術力は、やはり並々ならぬものがあると言えるでしょう。(2002/1/18)