F.シューベルト アルペジョーネ・ソナタ イ短調

ガスパール・カサド編

指揮ウィレム・メンゲルベルク
独奏チェロ:ガスパール・カサド
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1940年12月12日
発売及び
CD番号
Music&Arts(CD-780)
TAHRA(TAH 231)
キング(KICC 2063)


このCDを聴いた感想です。


 もともとはピアノ伴奏のソナタをチェリストのガスパール・カサドが伴奏部分をオーケストラへと編曲したもので、この録音はそれをカサド本人が弾いた演奏です。
 カサド編曲の協奏曲版は、他にはあまり録音は無いようですが、意外と楽譜自体は出版されています。といっても各パートまで詳細に掲載されているフルスコアではなくピアノ譜に担当楽器がゴチャゴチャと書き込まれたコンデンススコアにすぎませんが。(Schott社 ED 1550)
 このカサドの編曲は原曲に較べていかにも協奏曲らしい雰囲気になっています。
 原曲の伴奏であるピアノがいかにも独奏のチェロに対する伴奏という位置づけで、メロディーを担当する割合も8:2といったところでした。冒頭などの一部を除いて、ほとんどチェロは出ずっぱりです。
 一方、カサドの協奏曲版では伴奏の比重が格段に高まっています。もちろん協奏曲ですから独奏であるチェロが最も重要ですが、その割合は6:4ぐらいでしょうか。独奏が休みでオーケストラだけがずっと演奏している部分も結構あります。そういう部分のメロディーは原曲ではチェロが演奏していますが、協奏曲版では、完全に休みだったり主旋律とは全く異なる対旋律みたいな合いの手を入れていたりします。
 第2・3楽章はメロディーや伴奏を担当する楽器がいろいろ異なるだけで、曲の流れ自体は原曲とほとんど変わりはありませんが、第1楽章だけは、半分別の曲といいたくなるぐらい大きく変更されています。
 途中でバッサリカットされている部分があるかと思えば、逆に原曲には全く無い動きがいろいろ付け加えられています。例えば手元に原曲の楽譜があったとして、第2・3楽章はその楽譜でも充分に曲を追えますが、第1楽章はほぼ不可能です。そもそも冒頭から聴いていっても、ほとんど同じなのは第20小節目ぐらいまでで、原曲ではそれ以降もゆったりとしたメロディーが続くはずなのに、この演奏ではそこから急に、見たことも聴いたことも無いチェロの動きの速いソロが始まります。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の第1楽章にあったヴァイオリンが単独で音階を一気に上り詰めるソロと似たような雰囲気で、上りきった頂点でアクセントで三つの音を並べて見得を切るのを伴奏が後追いで真似る辺りもなんだかよく似ています。
 基本的にはオーケストラ部分が大幅に書き加えられていて、原曲の伴奏がわりと大人しく動きもシンプルだったのに対して、音色の幅が広がったのにあわせて華やかになり、いろいろな細かい動きも増えています。
 原曲を骨組みとしてよりふっくらと肉付けをしたといったところでしょうか。簡明さは少し薄れてしまいましたが、響きが厚く派手になり豪華な音楽へと変わりました。
 さらにオーケストラだけでなく独奏にも原曲にはないカデンツァが付け加えられていたり装飾音が増えていたりと、こちらも協奏曲らしくなっています。

 さて演奏の方ですが、やはり編曲者でもあるカサドの独奏チェロが聴き物です。
 テンポはそれほど動かさずどっしりと構えており、スケール大きく歌い上げるところが協奏曲の規模の大きさにうまく合っています。
 音色は重厚で厚みがあり、優美というより雄大で、堂々としています。
 伴奏のメンゲルベルクもかなり質実剛健で、テンポはあまり動かさず、重みがある力強い響きです。
 独奏のチェロが演奏している間はそれなりの存在感を保ちながらもしっかりと支え、オーケストラだけの部分になった時には、色彩豊かな音色と分厚い響きで、ピアノ伴奏とは異なるオーケストラでの伴奏の特色を強く表に出しています。(2005/11/5)


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