F.メンデルスゾーン.B ヴァイオリン協奏曲

指揮ユージン・オーマンディ
独奏Vn:アイザック・スターン
演奏フィラデルフィア管弦楽団
録音1958年
カップリングチャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲
発売CBS
CD番号460 239-2


このCDを聴いた感想です。


 アイザック・スターンが先日亡くなりましたので、その追悼の意味も込めて今回はスターンの演奏を取り上げることにします。

 ということで、ヴァイオリン協奏曲の中でも定番中の定番、メンデルスゾーンの協奏曲です。
 この演奏は、スターンの数多くある録音の中でも定評の高いものですが、聴いてみると確かに世評に違わない演奏だと納得しました。

 まずは独奏ヴァイオリンですが、テクニックに関してはもちろん申し分ありません。
 音は、テンションの高い張りのある音で、明るく輝いた音色なのですが、どちらかというと硬めの音です。
 そのため、本来はゆったりとした柔らかいメロディーにはあまり向かない筈なのですが、スターンは音色の代わりに歌い方を柔らかくする事で、ゆったりとしたメロディーの魅力をうまく引き出しています。

 伴奏のオーマンディは、絶妙なバランスで独奏にピタリと付けてきます。
 そのバランスは決して独奏を邪魔する事無く、しかも聴かせたいメロディー・パート等は自然と耳に入ってくるようにさりげなく強調されています。
 それぞれの楽器が、きれいに調和しあい滑らかで明るい響きを生み出しているのです。

 この演奏の中で最も素晴らしいのは第3楽章だと思います。
 第1・2楽章も十分に魅力的なのですが、テンポや歌わせ方で「惜しいっ!」と思う部分も無くはありません。
 しかし、この第3楽章は、テクニックといい、歌い方といい、ノリといい、前の2楽章を遥かに凌駕しています。
 ダイナミクスはピアノからフォルテまで幅広く、さらに一音たりとも曖昧な音が無く、しかもピアノでもしっかりと弾ききってメロディーを歌わせています。
 特に速いテンポで細かい動きを繰り返す部分は、独楽鼠のように素早く生き生きとしていて、テンポに上手く乗っかりつつ繰り出される正確な指回しに圧倒されます。

 スターンは、ゆったりとした音楽よりも、こういう華やかで素早い動きを要求される曲の方が向いていたのかもしれませんね。
 カップリングにチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲がついているのですが、この曲も第3楽章がずば抜けて魅力的でした。

 アイザック・スターンというと、わたしはヴァイオリニストの面より、まず最初に「カーネギーホールを救った人物」という功績の方が思い出されます。
 ニューヨーク・フィルに新しいホール(エイヴリー・フィッシャー・ホール)が出来たとき、カーネギーホールは取り壊される予定でした。
 しかし、スターンが中心となって保存を呼びかけた結果、カーネギーホールは現在まで存続する事が出来たのです。
 わたしがまだオーケストラやホールについて全く知らなかった子供の頃、カーネギーホールという名前は、音楽界における世界最高のホールという意味でした。
 それがもしかしたら現在存在しなかったかもしれないと思うと、わたしにとってスターンは大変に大きな存在なのです。(2001/10/12)


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