指揮 | グィド・カンテルリ |
演奏 | フィルハーモニア管弦楽団 |
録音 | 1951年10月12日 |
カップリング | ブラームス 交響曲第3番 |
発売 | TESTAMENT |
CD番号 | SBT 1173 |
カンテルリの<イタリア>の演奏は、世間に出回ったときから、専門家の間でも非常に高い評価を得ていました。 ただし、高い評価を得ていたのは1955年に同じくフィルハーモニア管と録音した演奏で、今回取り上げるは、それより4年前の1951年に録音した演奏のほうです。 たった4年間の間に2回も録音するというのは、何がしかメンゲルベルクの<悲愴>を彷彿させますが(彼も1937年と1941年に<悲愴>を(実は3回)録音しています)、メンゲルベルクの時代とは違いますから録音機器の問題ということもなさそうですし、不思議な感じがしますが、やはりカンテルリ自身が1951年の演奏を気に入っていなかったのでしょう。 実際、その時点で販売された(そして有名になった)のは、1955年の方だけだと思います。(詳しくは調べていませんので確かな事とは言えませんが…) 古い1951年の録音はこのTESTAMENTから発売されたCDが、おそらく初出になるのでしょう。 では、今回なぜ古い方の1951年の演奏について書くのかと言いますと……早い話がわたしがこっちの演奏の方が好きだからです(笑)。 両方ともモノラルですが、録音技術はたった4年間とはいえ着実に進歩しており、音の拡がりという点では1955年の録音の方が遥かに優っているように聞こえます。 しかし、なぜか音の生々しさという点では1951年の録音の方が優れていて、1955年の録音の方はくぐもったような響きになっているため、音が掠れたようになり瑞々しくありません。 ただこの違いは、再生装置によっても大幅に変わってくると思いますので、あくまでもわたしが自分の再生装置で聴いた際の印象です。 さらに、旧録音では音楽に疾走感があり、どこまでも伸びてゆくような若々しさを感じました。 さすがに若いためか、音楽にゆとりがなく、すっ飛ばしているような雰囲気はありますが、テンポにキレがあり、音自体が立って聞こえるため、逆にほどよい緊張感を生み出しているのではないかと思います。 旧録音と新録音で一番大きな違いは第3楽章です。 旧録音では6分ちょいだったのが、新録音では7分もかかっています。 聞き比べてみると、テンポの違いがそのまま音楽の違いに表れています。新録音のほうがゆとりを持って幾分ゆったりと音楽を進めているのに対し、旧録音では流れを重視し、より前へ前へと進む推進力があり、一つのフレーズの単位が大きくなっています。 わたしにとってカンテルリの魅力は、メロディーの歌わせ方にあります。 やはりイタリア人だからでしょうか、とても自然で伸び伸びしていて、どこまでも続いていって欲しい! と思わせてくれます。 実は、わたしが1955年の録音のCDを購入してから、この1951年のCDを購入するまでの間隔はかなり空いており、その間は1955年の演奏しか知りませんでした。 その頃は、1955年の演奏が、なぜそんなに評判が良いのか、今ひとつ理解できなかったのですが、1951年の録音を聞いて、なんとなく高い評価の理由を理解できたような気がします。(2000/10/6) |