F.メンデルスゾーン.B 劇音楽「真夏の夜の夢」より序曲・夜想曲・スケルツォ

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏BBC交響楽団
録音1938年1月19日
発売及び
CD番号
ARCHIVE DOCUMENTS(ADCD.111)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクが珍しくBBC交響楽団を指揮した演奏です。
 メンゲルベルクの演奏は、そのほとんどがコンセルトヘボウ管かニューヨーク・フィル(ニューヨーク・フィル響を含む)との共演で、それ以外のオーケストラはほとんどありません。2曲録音が残っているベルリン・フィルとウィーン・フィルがまだ多い方で、後は、旧ベルリン放送響とこのBBC響と真偽がだいぶ危ぶまれているパリ放送管を指揮したものが一曲ずつ残っているだけです。
 中でも、BBC響との演奏は、イギリスのオーケストラとの唯一の記録です。といってもメンゲルベルクがイギリスのオーケストラと全く縁がなかったかというとそうでもなく、ロンドン響あたりはしばしば客演していたようなのですが、残念ながら録音は残っていないようです。
 さて、その貴重な記録で聞くメンゲルベルクが指揮したイギリスのオーケストラの演奏ですが、演奏スタイル自体はやっぱりイギリスのというよりもメンゲルベルクの意志の方が強く感じられます。
 実は、オーケストラだけではなく曲目自体も貴重なものです。たしかに真夏の夜の夢はこの録音のちょうど10年前にコンセルトヘボウ管とスタジオ録音しているのですが、それはスケルツォだけなのです。それ以外の序曲と夜想曲はこのBBC響との演奏しかありません。
 ということは、スケルツォはともかく序曲と夜想曲については、メンゲルベルクがコンセルトヘボウ管を指揮した演奏がないため、イギリスのオーケストラだからコンセルトヘボウ管と較べてどう違ったという点は正確にはわかりません。
 しかし、聴いた印象としては、太く真っ直ぐに進んでいくリズムや、ポルタメントを入れて表情濃く歌ったメロディー、急激に膨らむクレッシェンドとテンポを思い切って引っ張ることによって生み出される劇的な盛り上がりなど、まさしくメンゲルベルクの音楽以外何者でもなく、オーケストラの違いなんてほとんど二の次のような気になってしまいました。
 序曲で、真夏の夜の夢全曲で終盤に登場する「無骨者(田舎者)の踊り」のメロディーが出てくる直前の低音の連打などは、無骨者の高音のメロディーと対比させるためか、思いっきり重く力強く演奏しています。なんだか、ストラヴィンスキーの春の祭典の第2部の「生贄の讃美」の直前に出てくる11連打みたいでしたね。
 夜想曲も、優しく幻想的な音楽ではなく、あくまでドラマチックに盛り上げ、力を込めてメロディーを歌っています。
 スケルツォだけは、コンセルトヘボウ管の録音があり、それと較べると音の太さが多少細く、より硬めで直線的という印象を受けます。良くも悪くも表情が濃厚でギラギラしているコンセルトヘボウ管の演奏よりもずっとスッキリとした音楽になっています。
 個人的には最も違いに驚いたのは、内容よりもカットをしていない点です。
 コンセルトヘボウ管との録音の時には行なっていた、のべ44小節にも及ぶカットを全くやっていません。
 自分のではなく他の人がトップのオーケストラだからそこのオーケストラの慣習に従ったのか、それとも単にライブだから録音時間を気にしなくて良かったためだったのか、なかなか興味を引かれるところです。
 いろいろ貴重かつ面白いこの録音ですが、残念なことに録音状態はかなり酷いものです。
 CDを製作しているArchiveDocumentsの方針が雑音を消さずに響きをそのまま伝えるというものなので、しょうがないといえばしょうがないのですが、これがまた半端じゃなく雑音だらけです。おまけに途中で音が飛ぶことも珍しくありません。そもそもCDのリーフレット自体に『worn and damaged acetates(擦り切れて損傷している)』と書かれているぐらいですから、状態の悪さがうかがえます。
 せっかくBBC響絡みの録音なのですから、状態の良い原盤が倉庫から発見(発掘?)されて、BBC Legends辺りで出て欲しいものです。(2006/3/18)


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