F.メンデルスゾーン.B 劇音楽「真夏の夜の夢」よりスケルツォ

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1928年6月12日
発売及び
CD番号
Pearl(GEMM CDS 9070)


このCDを聴いた感想です。


 今回も、前回の弦楽セレナード同様、正式に発売された演奏と同じ日に録音された、テイク違いの演奏です。
 正式に発売された方が2テイク目で、この演奏は、1テイク目にあたります。
 この曲に限らずメンゲルベルクの演奏は、10年以上年月を隔てた録音でもあまり変化しない方ですから、ましてや同じ日に録音されているテイク違いの両演奏は、ほとんど解釈に違いはなく、非常に良く似ています。
 二つが別の演奏である事を予め知らなかったら、たぶん、同じ演奏だと言われても全く疑問に思わなかったでしょう。
 それでも、別の演奏である事を知っていて、そのつもりで聴いてみると、さすがにわずかながら違いが見えてきます。
 この違いは、チャイコフスキーの弦楽セレナードの時の違いと、だいたい同じです。
 2テイク目がじっくりと落ち着いて演奏されているのに対して、1テイク目は、プレイヤーがテンポに乗り切れていなくて、もたついたり、逆に前に転びそうになったりしています。
 特に、木管楽器や、曲の頭の方の弦楽器は、「朝っぱらのレコーディングで、まだ、指が暖まってないんじゃないだろうか?」と想像してしまうぐらい、危なっかしい指使いになっています。
 しかし、勢いはあり、音のキレもこちらの方が鋭く感じられます。
 なかでも、曲の終盤で、弦楽器が全員(コントラバス以外)ユニゾンで、中音域でメロディーを演奏し、それがだんだんクレッシェンドしながら音が上の方に上がっていき、楽譜通りで行けば徐々に小さくなるはずなのですが、メンゲルベルクは楽譜を変えて、頂点でスパッと切ったようにピアノにする一連の流れは、1テイク目と2テイク目で大きく差があります。
 クレッシェンドして行くにつれて、テンポも次第に上がり、その頂点で、それまでの興奮が嘘の様に、さっとピアノに落ちるという方向性自体は、1テイク目も2テイク目も変わりは無いのですが、1テイク目の方が徹底しています。
 テンポの速くなり方も急激ですし、フォルテの音も力強く、切迫した熱気があります。
 さらに、フォルテからピアノへの落差も、1テイク目の方が大きく、一瞬、音を見失って、取り残されたかのような感覚を覚えました。
 わたしは、この1テイク目の演奏の方が、多少アンサンブルに乱れはあっても表現が大きくて良いと思うのですが、一箇所ちょっとおかしな点があります。
 それは、終盤のフルートのソロの直前で、オーボエとクラリネットがピアノのユニゾンで演奏する短いソロがあるのですが、このソロを、クラリネットが落っこちてしまい、吹いていないように聞こえます。
 これが、本当にミスで落っこちてしまったのか、それともメンゲルベルクが譜面を変更してオーボエだけにしてしまったのか、非常に微妙なところです。
 もし、ミスではなく、楽譜を変えているのであれば、1テイク目と2テイク目の両方とも吹いていないわけですから、較べて聴いてみれば一発で判明するはずと思われるかもしれませんが、これがまたそう簡単には行かないのです。
 というのは、何分、1920年代の録音だけあって音が悪く、クラリネットが吹いているのかいないのか、よく聴き取れません。
 1テイク目では吹いていなくて、2テイク目では吹いているようにも聴こえますし、両方とも吹いてないようにも聴こえます。
 あるいは、本当は両方ともちゃんと吹いているのに、楽器の音をマイクが拾いきっていなくて、聴こえていないだけかもしれません。
 もっと状態の良い復刻が出れば、もう少し明らかになるとは思いますが……
 ただ、クラリネットが落ちてしまって吹けなかったとすれば、1テイク目が採用されず、録り直した理由として納得できるものです。(2003/4/12)


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