F.メンデルスゾーン.B オラトリオ「エリア」

指揮ジェイムズ・コンロン
独唱バスI(エリア):アンドレアス・シュミット
ソプラノI(寡婦、天使):アンドレア・ロスト
コントラルトI(天使、女王):コーネリア・カリシュ
テナー(エイハブ、オバディア):デオン・ヴァン・デル・ワルト
ボーイソプラノI(少年):ヨハネス・ディーツェル
演奏ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団
デュッセルドルフ州楽友協会合唱団
録音1996年2月14〜17、21・22日
発売EMI
CD番号5 56475 2


このCDを聴いた感想です。


 大人しい演奏というのが最初の印象でした。
 とにかくオーケストラが控えめなのです。
 独唱や合唱が前面に出ていてオーケストラはほぼ伴奏に徹しています。歌を立ててフォルテでも決してかき消したりはしません。オーケストラが強く自己主張するのは歌が登場しない序曲などだけです。
 オーケストラの中のバランスも、弦楽器がメインで管楽器、特に金管楽器はかなり抑えられています。音量としては管楽器もそれほど聞こえないぐらい小さいわけではないのですが、アタックを強くつけず、個々の楽器の音色よりも全体として調和した響きを聞かせています。たしかに整って美しいのですが、パンチ力はほとんどありません。
 そのため、第38曲の「かくて、預言者エリアは火の如く現れ」でトランペットがどれだけしっかり出ているかを重要な鑑賞ポイントとしている、派手な演奏を好むわたしような聞き手にとっては、ちょっと物足りなく感じてしまうと思います。
 しかし、フォルテでの爆発力は無くてもていねいに整えられた美しさはありますし、この美点は、なによりピアノの部分で生きてきます。
 ピアノでは、フォルテでは響きが厚くて隠れがちだった繊細なニュアンスの変化がライトアップされたようによくわかりますし、歌とオーケストラのバランスも良く合っています。面白いことに、抑え目な管楽器に対して、ティンパニーだけは、弱いながらも粒を際立たせてハッキリと叩いていて、これが流れに区切りをつけ、メリハリを生んでいます。
 伴奏に徹しているオーケストラに対して、独唱と合唱はしっかりと出ています。
 オーケストラの表現の幅を5としたら独唱と合唱の表現の幅は倍の10はあり、ほとんど歌がオーケストラを覆い隠すぐらいの勢いです。
 独唱なんかは、メロディーを歌わせるというより歌詞の内容を聞かせるという雰囲気で、かなりドラマチックに表情をつけています。
 ただ、表現の幅が広くてドラマチックといっても、荒くなったりはしません。あくまでも響きの美しさを保った範囲の中でのことで、たしかにそこから飛び出さない分、迫力や力強さは少しかけています。その代わり、フォルテでも良く揃った濁りの少ない響きで、ましてやピアノの部分では、かなり高水準の澄んだ響きを聞かせています。第28曲「山に向かいて目を上げよ」のソプラノ二人とアルト一人の三重奏(よくボーイソプラノ三重奏で歌われます)はその良い例で、響きの合った美しいアンサンブルには思わずうなってしまいました。
 全体としてはどうしても地味に聞こえますが、細かい部分を聞いていくと、ていねいに仕上げられていて、繊細な表情がついているなかなか良い演奏です。(2006/7/1)


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