F.メンデルスゾーン.B 序曲「静かな海と楽しい航海」

指揮クリストフ・フォン・ドホナーニ
演奏ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音1978年12月
カップリングメンデルスゾーン 交響曲第3番<スコットランド> 他
発売DECCA
CD番号460 239-2


このCDを聴いた感想です。


 なるほど、『楽しい』航海でした。

 この曲のタイトルの前半分は『静かな海』です。
 そうすると、後半は対比させて『嵐』とでも続きそうなものなのですが、この曲のタイトルは『楽しい航海』と続きます。
 正直なところ、曲を聴く前は、タイトルなんて全然気にしていませんでした。

 曲の始まりは、『静かな海』との言葉どおり、ゆったりと静かでおだやかです。
 フレーズのまとまりも大きく、音符も細かい動きがなく、二分音符や全音符のような白玉のオンパレードです。
 それらが、何小節もかけてゆっくりとクレッシェンドしたりデクレッシェンドしていく様子は、まさしく静かに波が寄せては返しているようで、甲板に寝転がっているようなリラックスした気分になってきます。
 そして、こういうゆっくりとした始まり方をする曲は、たいてい途中から急に激しく速いテンポに切り替わります。
 この曲も、ご多分に漏れず途中から激しい速いテンポになることは、楽譜の先のほうを見てわかっていました。
 そこで、どんな雰囲気かはある程度予想していたのですが……

 予想を完全に裏切られました。

 静かなテンポから急に速いテンポになるというと、わたしはチャイコフスキーの「ロメオとジュリエット」とかR.シュトラウスの「死と変容」とか激しい曲調を予想していたのですが、この曲の場合は、速いテンポに入ってからも活発ではありましたが、明るく伸び伸びとしていました。
 そこで、はたとタイトルを思い出したのです。
 ……そーいえば、この曲のタイトルは『静かな海と嵐』なんかじゃなくて『静かな海と楽しい航海』だったっけ。
 曲を聞いて納得しました。
 なるほど、これは確かに『楽しい航海』です。
 メロディーの一つ一つが、明るく健康的で、苦痛とか忍耐とかそういったネガティブな要素を全く感じさせません。
 大海原とか心地よい風とかそういうプラス面ばかり頭に浮かんできます。
 さらに、この曲は最後も凝っています。
 最後の3小節で、フォルティシモから急激にピアノにデクレシェンドする事で、楽しい航海が、最後にまた静かな海に戻っていく様子が見事に表現されているのです。

 それにしても、この曲を聞いていると、改めてメンデルスゾーンは凄いなと実感します。
 こういう屈託の無いメロディーを書かせたら天下一品ですね。
 よくチャイコフスキーとかは、メロディーを書かせたらずば抜けた才能があると言われますが、メンデルゾーンも、方向性は大分異なっていますが、やはり同じくらいずば抜けた才能があることがよくわかりました。

 この演奏は、ドホナーニ自らが常任を務めているクリーブランド管ではなく、ウィーン・フィルと録音していますが、方向性はよく似ています。
 楽器間のアンサンブルを重視して、とてもクリアな音響を作り上げています。
 このクリアな響きが、この曲の明るい雰囲気に良くマッチしています。(2001/9/26)


サイトのTopへ戻る