F.J.ハイドン 交響曲第98番 変ロ長調

指揮オイゲン・ヨッフム
演奏ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団
録音1972年10月
カップリングハイドン 交響曲第93番 他
ハイドン ロンドンセットの一部
発売Grammophon
CD番号437 201-2


このCDを聴いた感想です。


 ロンドン・セットの12曲の交響曲はセットで録音されることも多く、ハイドンの交響曲の中ではかなりメジャーな方に入るでしょう。しかし、「驚愕」や「軍隊」などのようにサブタイトルがついているもの以外の番号だけの曲は、番号が90番台や100番台と大きいこともあって、どれがどんな曲だったかとっさには思い出せないことがあります。その中で、わりと覚えやすいのが、唯一の短調の第95番と、この第98番です。
 なにしろ第98番には、わかりやすい特徴があります。
 一つはチェンバロの伴奏がつくこと。実はわたしの持っているドーバー版の総譜(どうやらハイドン協会版らしいのですが)を見る限りは、チェンバロの伴奏などどこにも無いのですが、たいていの演奏には登場して、第4楽章の最後ではソロまであって思いっきり目立っています。
 もう一つが、第2楽章のメロディーです。この出だしが英国国歌にそっくりなのです。途中からはだいぶ違ってくるのですが、初めの4小節は、あやめとかきつばたかと言いたくなるほど良く似ています。
 このチェンバロと英国国歌がある限り、たとえ他の細かい部分を忘れたとしても、第98番と言われてもすぐに、ああ、あれだ、と思い浮かべることができるのです。
 ヨッフムの演奏もちゃんとチェンバロが加わっています。ロンドン・セットの他の曲には入れていなくてもこの曲だけは入れています。しかも、他の指揮者の演奏では、チェンバロが加わっていてもソロがある第4楽章のみという入れ方も少なくないのに、ヨッフムの場合は律儀に第1楽章からしっかりと入っています。もっとも、いかにも入ってますよと強調するような入れ方ではなく、あくまでも目立たない形で、ソロを除くと本当に通奏低音の補助という程度ですね。チェンバロが加わるということを知っていれば入っていることが分かりますが、知らないで聞けば、響きが他の曲に較べてなんだか少し違うかな、ぐらいにしか気づかないかもしれません。
 なにより、オーケストラの演奏が生き生きとしていてチェンバロに較べてはるかに存在感があります。
 基本は現代楽器の大編成らしい厚い響きがあり、全体を柔らかく包んでいます。古楽器や室内管弦楽団のような締まった鋭い響きと異なり、厚い大きな響きが安定感とリラックスした雰囲気を生み出しています。ただ、安定感があるといっても重くダラダラと動きの鈍い演奏ではありません。メロディーなどの動きは古典的というかフレーズをきっちりと守った折り目正しい歌い方でリズムをしっかりと守っています。このメロディーの歌い方は、たしかに感情を思いっきりぶつけたような歌い込みではないのですが、四角四面の堅苦しい歌い方とも違います。動きにキレがあり、伸び伸びと躍動するように、跳ね回っています。生き生きと歌いながらリズムはしっかりとして、それを厚い響きが大きく支える、これがこの演奏の魅力ではないかと思います。(2007/3/5)


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