F.J.ハイドン 交響曲第97番 ハ長調

指揮トーマス・ビーチャム
演奏ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
録音1957年3月9・26日、1958年4月8日
カップリングハイドン 交響曲第93番 他
ハイドン ロンドンセットの一部
発売EMI
CD番号CMS 7 64389 2


このCDを聴いた感想です。


 重厚かつ楽しげな演奏です。
 基本的にテンポは遅めで、大編成のオーケストラらしく、厚く重みのある響きですが、力ずくで押し切ったような威圧的なところはありません。
 強面ではなく、ニコニコと愛嬌があります。
 重厚ですが明るく、響きが厚いためどこぞの真夏の夜の夢のいたずら好きの妖精のように陽気に跳ね回るような活発さはありませんが、遊ぶ子供たちを見守るおじいさんといった感じで、穏やかに笑みを浮かべて、本人はほとんど動かずどっしりと腰を下ろしています。
 第3楽章は、そんな特徴がよく表れています。
 メヌエットとしても少し遅めで、明るい響きでじっくりと進んで行きます。他の演奏ならトリオの時に感じられる雰囲気を、メヌエットの最初からずっと貫いているようなものです。
 ただ、遅くて明るいといっても、のんびりダラダラとメリハリ無く演奏しているのではありません。
 一つ一つの音の処理や音と音とのつなぎなどの細かい部分にもずいぶん神経を使って丁寧に仕上げています。そのため、明るく楽しげな雰囲気を保ちながら、決めるべきところではきっちりと揃い、メリハリのある締まった演奏になっています。
 一方、第2楽章のようにテンポの遅い楽章では、メロディーを、あまりアタックを強くつけない穏やかな雰囲気の中で、じっくりと歌っています。
 この曲の第2楽章は、ハイドンの交響曲の緩徐楽章では典型的な変奏曲形式のもので、他の演奏では、テンポこそ遅いものの、わりと強くメリハリをつけて直線的に演奏する場合も多いのですが、この演奏はメリハリをあまり強調せず、ゆったりと歌わせています。
 ほとんど、ベートーヴェンの交響曲第2番以降の緩徐楽章を演奏しているみたいな、じっくりと力を込めた歌い方です。
 途中から主題が変奏され、短調やら激しいのやらいろいろなヴァリエーションが登場しますが、力を入れてゆっくりとしたテンポで歌いこむスタイルに変わりは無く、変奏のさまざまな性格の違いを楽しむのにはちょっと向いてないのではないかと思います。
 第1・4楽章のような速いテンポの楽章では、もう少し活発です。
 古楽器によくある演奏のような鋭さはありませんが、厚い響きながらなかなか反応良く動きます。
 重い音がキレ良く動くあたり、力強さも感じられます。
 ただ、それでも必ずベースには明るさがあります。
 緊張感高く全力で弾く演奏はたしかに聴いていて圧倒されますが、この演奏のような緊張感はそうでもないけれども華やかで楽しい演奏というも魅力的なものです。(2006/2/4)


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