F.J.ハイドン 交響曲第96番 ニ長調 <奇跡>

指揮エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1952年12月
カップリングF.ハイドン 交響曲第94番<驚愕> 他
発売DECCA
CD番号DECCA 476 8483


このCDを聴いた感想です。


 ビシッと正装で決めてニッコリ。
 そういう印象を受けました。
 録音当時としてはむしろ一般的でしたが、現在は古楽器系精鋭小編成の勢力が強くなっているため、今となっては少し珍しい大編成によるハイドン。イギリス系よりもドイツ系に近いため、けっこう響きが厚く重みがあります。
 テンポは、非常にしっかりとしていてブレがありません。テンポがしっかりしているため響きに重みがあっても、引きずるような重苦しさは無く、一つ一つの音に至るまで締まった音で鋭く刻み込んでいくため、音楽がしゃきっとしています。まさに、正装をきちっと身にまとい、姿勢もだらけるのではなく、背筋をピンと伸ばした折り目正しい演奏です。
 しかも、テンポがしっかりとしているといっても、テンポを杓子定規に守って、カクカクと硬い、堅苦しい演奏でもないのです。動きに躍動感があり、メロディーだけでなく伴奏に至るまで生き生きとした音楽を作っています。これは第1楽章のアレグロに入って以降や、第4楽章のような速いテンポの部分によく特徴が出ていて、放っておけば、そのままはるか彼方まで行ってしまいそうなぐらい、明るくリズムに乗ってどんどん進んでいきます。
 この形は崩さずそれでいて明るく生き生きとしているところが、「正装でニッコリ」というイメージなのです。
 一方、第2楽章などの遅いテンポの部分では、大編成の特性が生かされています。
 相変わらずテンポはしっかりしているため、遅いテンポでも後ろに引っ張られるような疲れる重さはなく、代わりに確かな足取りで一歩ずつ進んでいくような着実さがあります。
 そこに、フォルテの部分ではパワーが加わり、古典派の曲なのに目を見張るような迫力が感じられます。たぶん全曲の中で最も力強いのは第2楽章の後半ではないでしょうか。
 また、印象深かったと言えばオーボエが挙げられます。
 特に第3楽章のトリオです。ここはオーボエの大きなソロがあり、もともと聴かせどころの一つで、どの演奏でもオーボエは力を入れて演奏しています。
 この演奏のソロは、伸び伸びとしていて、高い音に上がるところなど、まさに屋外で空に向かっているかのような開放感を感じます。音色も細身ながら透明感があり、雲雀が天に昇るようにまっすぐ上に向かって伸びていきます。
 最後に、この演奏で特筆しておきたいのが録音です。
 モノラルの中ではほぼ最上級に近いのではないでしょうか。雑音はほとんど無く、音が非常に生々しく聞こえてきます。
 ヴァン・ベイヌムのモノラル録音でわたしが今まで聞いたものは、同年代の他の録音に較べるとなぜか音が悪いものが多く、当時評価の高かったDECCAの録音とはとても思えなかったのですが、これはそういう悪いイメージを払拭してくれました。たしかにステレオ録音でないのは惜しいところですが、その点を差し引いていも60年代のステレオ録音と較べてもそれほど遜色無いと思います。(2009/6/6)


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