F.J.ハイドン 交響曲第94番 ト長調 <驚愕>

指揮グィド・カンテルリ
演奏NBC交響楽団
録音1949年12月31日
カップリングワーグナー 歌劇「リエンツィ」序曲 他
「The NBC Broadcast Concerts Dec.1949-Jan.1950」の一部
発売TESTAMENT
CD番号SBT4 1306


このCDを聴いた感想です。


 なんともパワフルな演奏です。
 NBC響の威力を十分に生かし、ハイドンとはとても思えないくらい力強い音楽になっています。
 ハイドンだからといって人数を減らしたような締まった響きにするのではなく、フル編成のままのような厚い響きです。各パートの軽妙な掛け合いも分厚い響き同士が正面からぶつかり合った濃い絡み合いになっています。
 ただ、響きが厚いからといって重かったり輪郭がぼやけたりはせず、それぞれのパートの動きは素早くピタッと揃っており、現在の古楽器系の演奏に多いクリアな動きそのままで一本一本の線を太くした感じです。
 とはいえ、古楽器系の演奏を、予選を勝ち抜いてきた少数精鋭による100メートル走決勝とすれば、この演奏は競技場の選手全員が一斉に土煙を上げて走り出すようなもので、その力強さと圧倒的な迫力は、よほどパワーがないと実現できるようなものではありません。もちろんその反対に、針のような細く鋭い音による精緻なアンサンブルはとてもこの演奏からは望めないわけですが。
 基本的な演奏のスタンスは、トスカニーニ━カンテルリ系の一定のテンポをしっかりと保ったもので、メロディーの流れによる伸び縮みはほとんどありません。テンポ自体はそれほど速いというほどでもないのですが、テンポが変わらない分、前へ前へと畳み込んで行くような切迫感があります。
 力が入っているのは冒頭のピアノの部分から既にそうで、リラックスしたような柔らかさはなく、速いテンポの呈示部への予兆みたいに、硬く緊張感のある雰囲気です。ただここはちょっと硬すぎて個人的にはもっと柔らかくても良かったのではないかと思いました。むしろ呈示部に入ってからの方が動きがある分、肩の力が抜けて生き生きとしています。
 同じピアノでも第2楽章の方は、もともと少し緊張感が漂う音楽なので硬くても違和感は感じません。また、前半に登場する「驚愕」の由来ともなったフォルティッシモの一発は、録音のせいもあって眠っている人を起こすほどのインパクトはありませんでしたが、その分、後半の全体が盛り上がる部分で、他の速い楽章にはない、パワーを思う存分発揮した重量級の厚い響きで押し寄せて来て、とても眠るどころではなくなります。
 急な変化によるインパクトは、第2楽章ではなく第4楽章に待ち構えています。
 楽章の終盤に登場するティンパニーのトレモロが、一体何があったかと思うぐらい激しいクレッシェンドなのです。
 ほとんど、ティンパニーで他の楽器全てをかき消してしまうほどで、明らかにバランスが崩れています、それまでの四つの楽章を通じて全く普通だったバランスがいきなり破綻するので、これはびっくりします。まさしく「驚愕」です。
 演奏は、そうやって意表をついておいて、次の瞬間にはサッと元に戻すことで改めて力強さを再認識させて、さらに一段と熱を込めて最後まで突っ走っていきます。
 曲が終わった瞬間、ハイドンとは思えないぐらい熱狂的な拍手の嵐が聞こえてきますが、こういう演奏なら聴衆が熱くなるのもわかるような気がしました。(2005/3/5)


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