F.J.ハイドン 交響曲第92番 ト長調 <オックスフォード>

指揮セルジュ・チェリビダッケ
演奏ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
録音1993年2月28日
カップリングW.A.モーツァルト 交響曲第40番
発売EMI
CD番号5 56519 2


このCDを聴いた感想です。


 チェリビダッケというと、特に晩年の演奏はテンポがとんでもなく遅いことで有名ですが、この演奏も例に漏れません。それでもアレグロ部分は他の演奏より多少遅いぐらいですが、第1楽章の序奏や第2楽章などのアダージョは噂に違わぬ遅いテンポで貫かれています。
 わたしは速いテンポ好きなので、チェリビダッケのような遅いテンポの演奏はどちらかというと苦手なのですが、この演奏は、遅いテンポにしてはあまりそれが気にならず面白く聴くことができました。
 一番大きな理由は、内容の濃さでしょう。
 遅いテンポを活かして、細かい動きに至るまで豊かに表情が付けられています。
 メロディーはもちろんのこと、伴奏のちょっとした動き、それも対旋律のような動きのあるものだけでなく、和音や伸ばしの音まで一体となって表情を作っているのです。
 以前から、チェリビダッケの演奏は対旋律や和音などの主旋律以外の扱いが大きいと聞いていましたが、この演奏を聴いて納得しました。音量のバランスからいっても和音や対旋律が主旋律とそれほど遜色ない強さで歌われています。そのため、主旋律と対旋律・和音が絡み合い、音楽が立体的に聞こえます。また、それだけ対等に扱っていながら動き同士が干渉しあって音や響きが濁ることがなく、それぞれの動きがくっきりと鮮やかなところはやはりチェリビダッケならではの上手さなのでしょう。
 さらに、テンポの遅さと共に驚かされたのが響きの厚さです。
 たしかにミュンヘン・フィルはドイツのオーケストラで、さらに大編成で演奏しているのかもしれませんが、それにしてもまるでブルックナーのような濃く厚い響きです。
 しかも、重低音が思いっきり効いています。
 フランス系のオーケストラのような和音の一部という立場を外れた独立した声部という目立ち方ではなく、あくまでも和音の土台なのですが、縁の下の力持ちどころではなく、和音なのに上の音の方がオマケに聞こえるぐらい、強く迫力のある音です。
 ただ、音が揃って響きに濁りがないために、分厚く低音が強い響きなのに、それほど重くは感じません。厚みがあるわりには風通し良くすっきりとした響きです。
 まあ、テンポがただでさえ遅く内容も濃いのですから、これで響きが重苦しいものだったら、とても最後まで耐えられなかったかもしれません。チェリビダッケは今まで敬遠気味でしたが、こういう演奏が多いのであれば、他にもいろいろ聴いてみようかなという気になってきます。(2007/5/5)


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