F.J.ハイドン 交響曲第104番 ニ長調 <ロンドン>

指揮ロジャー・ノリントン
演奏SWRシュトゥットガルト放送交響楽団
録音1999年9月29日〜10月1日
カップリングシューマン 交響曲第2番
発売hänssler
CD番号CD 93.011


このCDを聴いた感想です。


 ロジャー・ノリントンというと、ロンドン・クラシカル・プレーヤーを指揮していたという点から、何となく古楽器系に近い指揮者ぐらいのイメージしか無かったのですが、この演奏の第1楽章を聴いた時、いきなりイメージは覆ってしまいました。
 冒頭のテンポ設定はアダージョなので、テンポの遅さにはそれほど驚きませんでした。
 それよりもビックリしたのは、サウンドの重さです。
 ドイツのオーケストラなんだから当たり前といえば当たり前なんですが、ハーモニーのどっしりとした安定感は、いかにもドイツの大編成のオーケストラっぽく、正直言ってノリントンのイメージとは違っていました。
 しかし、それ以上に驚いたのが、提示部のアレグロに入ってからです。
 わたしは、アレグロは古楽器系の演奏ではかなり速く演奏するもの、という先入観があったため、この演奏のテンポの遅さにはかなり意表を突かれました。
 現代楽器のオーケストラでの演奏と較べてもまだ遅い方で、これはもしかしたらクレンペラーの霊が付いてるんじゃないだろうかとさえ思えてきます。さらにメロディーの歌い方に至っては、非常に曲線的で染み込むような綿々とした情緒を感じさせるような歌わせ方で、なんだか一昔どころか二昔ぐらい前の演奏のようです。
 ただ、たしかにイメージとは違ったのですが、これはこれで別のよさがあり、柔らかさと昔の巨匠のようなスケールの大きさが感じられます。
 特に柔らかさの方は、感心する同時に、そのあまりの柔らかさに、何だか身体を羽箒で触られているようななんだかくすぐったい気分になって来るほどです(笑)

 これが第2楽章に入ってさらに柔らかくなるかと思えば、今度は第1楽章とは全く逆の雰囲気に変わってしまいます。
 普段イメージする第1楽章の提示部と緩徐楽章の雰囲気が丁度逆になったようなもので、テンポもかなり速めで、メロディーの歌い方もずっと直線的になりキビキビした動きを見せます。
 わたしがロジャー・ノリントンのイメージとして考えていたのは、むしろこういった直線的な方で、そういう点から考えるとイメージ通りと言えるのでしょうが、何分第1楽章の雰囲気があまりにも柔らかい雰囲気だったため、その落差の衝撃の方が大きく、聴く前のイメージなんて既にどこかに消えてしまっていました(笑)

 これが第3楽章になると、一つの楽章の中で雰囲気をガラリと変えています。
 主題部はテンポを一定にキープし、音を短めに切って、キレの良い音楽を聴かせてくれるのですが、これがトリオに入ると、主題部がまるで嘘のように、テンポを大きく伸び縮みさせ、メロディーを柔らかく歌わせているのです。
 たしかに主題部とトリオとはある程度雰囲気を変える指揮者が多いのですが、それにしてもここまで極端にやる人も珍しいのではないかと思います。

 それまでの3楽章に較べると、第4楽章は雰囲気の変化という点では奇をてらった部分が無く、目新しさに欠けるといえるかもしれません。
 しかし、その代わり、より正統的で、音楽の流れにも一貫性があります。
 楽章を通して祝祭的な明るい雰囲気に溢れ、なにより音楽が生き生きとしています。
 特に伴奏を含めて音のキレのよさは抜群で、一つ一つの音にスピード感があり、その上、ダイナミクスの変化に対するオーケストラの反応も気持ちが良いほど素早く、シュトゥットガルト響の実力の高さには、毎度の事ながら感心させられます。(2002/8/23)


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