F.J.ハイドン 交響曲第104番ニ長調<ロンドン>

指揮オイゲン・ヨッフム
演奏ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団
録音1971年10月
カップリングハイドン 交響曲第95番
ハイドン ロンドンセットの一部
発売GRAMMOPHON
CD番号437 201-2


このCDを聴いた感想です。


 この演奏は、楽器同士のバランスに驚かされました。

 これほどまでに、弦主体のバランスにした演奏は初めて聴きました。
 管打楽器は、弦楽器が演奏していないときに初めて自己主張がわかるぐらいで、弦楽器と同じ音を吹いているところでは、ほとんど弦楽器しか聞こえません。
 もちろん、全く聞こえないということは無いのですが、管楽器は、何だか弦の補強みたいな感じで、あくまでも補助として弦楽器の上に薄く乗っかってるといった雰囲気です。
 わたしがこのバランスにビックリしたのは、今まで古楽器の演奏ばかり聴いていたせいでもあります。
 古楽器の演奏の多くは、現代のオーケストラと較べて弦楽器の人数を大幅に減らしています。その一方、人数が決まっている管楽器は今も昔も人数に差が無いため、管のバランスが強くなり、管楽器の動きや音色をハッキリと聞き取る事が出来ます。
 それに較べると、この演奏のロンドン・フィルは……これは、たぶん人数を減らさずフル編成にしてますね。
 弦楽器の厚さに大きな違いがあります。
 ここまで、サウンドが分厚くなると、弦楽器が出てきただけで、他を全て覆い隠すほどの圧倒的な存在感があります。
 しかし、考えてみれば、古楽器が流行る前の演奏スタイルは、きっとこういうバランスの方が標準に近かったんでしょうね。
 わたしは、古楽器の演奏のような、弦と管がほとんど対等なバランスの演奏も好きなのですが、こういうバランスの演奏も意外と楽しく聴くことが出来ました。
 弦楽器が常に前面に出ていると、音色的には一色に近くなるため、ともすればのっぺりした演奏になりやすいのですが、ヨッフムはメロディーを良く歌わせることで表情を豊かにして、音楽が単調になるのを防いでいます。
 しかも、弦楽器が常に聞こえることで、古楽器の演奏とかでは管楽器の陰に隠れてあまり聞こえなかった内声部やちょっとした伴奏部が聞き取れるようになり、新たな発見も多くありました。
 さらに、ヨッフムはテンポも昔風にゆっくりしたものなので、余計によく分かります。

 解釈自体は、概ね変わったところは無いのですが、一箇所だけ面白い事をしている部分があります。
 第3楽章で、頭からメロディーをなぞって行くと、最初のアウフタクト(予拍)のある小節は数えずに第6小節目の第3拍目にスフォルツァンドで上に音が跳ね上がる部分があります。
 その次にまた低い音に下がってトリルになるのですが、このスフォルツァンドからトリルの部分が一瞬間が空いているのです。(楽譜(1)の縦の赤線が引っ張ってある部分)第3楽章の頭の部分です
 そのため、このスフォルツァンドの音で一瞬音楽が止まり、トリルの音でまた流れが元に戻ります。
 聴いていると、まるでスフォルツァンドの高い音に向かってジャンプして、一瞬宙に浮き、トリルの音に落っこちてきたみたいに聞こえます。
 他にこんなことをやっている演奏というのは聞いたことがありませんが、なかなか面白い解釈です。(2002/1/4)


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