F.J.ハイドン 交響曲第103番 変ホ長調 <太鼓連打>

指揮シャーンドル・ヴェーグ
演奏カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク
録音1996年8月11日
カップリングハイドン 交響曲第104番<ロンドン>
発売ORFEO
CD番号C 470 971 B


このCDを聴いた感想です。


 この演奏の特徴は、なんといっても第2楽章のテンポにつきます。
 とにかく遅いのです。それも他の演奏より少し遅いとかその程度ではありません。ほとんど別の曲に聞こえるぐらい、極端にテンポを落としています。
 わたしも他の演奏をそれほど聴いたことがあるわけではありませんが、第2楽章の演奏時間は、だいたい10分前後が平均だったと思います。(もちろん繰り返しにもよりますが)
 しかし、ヴェーグの演奏は12分強。2割増もの演奏時間がかかっています。
 テンポが遅くなったからといって単純に横に引き伸ばしただけの間延びした音楽ではありません。そもそも雰囲気が全く違うのです。
 他の演奏は人が普通にスタスタと歩くようにテンポ良く進んでいるのに対して、この演奏は、まるで薄氷の上を歩いているみたいに、一歩一歩確認しながらおそるおそる足を運んでいるかのようにジワジワと進んでいきます。
 もう、じれったくなるほど注意深く一音一音丁寧に音を出しています。そのために横の流れや拍などのリズム感はほとんど失われていますが、その分、一つの音に対する集中力は高く、息の詰まるような緊張感があります。躍動感の代わりに荘厳で、他の演奏のテンポの良さが行進曲風としたら、この演奏は行進曲は行進曲でも葬送行進曲ですね。
 他の三つの楽章も、第2楽章ほどではないしても、テンポの良さよりも丁寧な音作りを重視した演奏です。
 こちらはある程度スピードもあり、そのスピードに乗せて自然にメロディーを流しています。
 さらに、そのメロディー(主旋律)に絡む伴奏や対旋律の扱いも非常に滑らかです。
 常に柔らかく良く歌い、メロディーを主としながらも、縁の下に徹するのではなく、足りないところを補い、表現に幅を持たせています。
 演奏しているカメラータ・アカデミカ・ザルツブルクは、もともとはパウムガルトナーによって結成された団体で、小編成の室内管弦楽団です。
 小編成らしく、古楽器系の団体に近い、動きの軽い引き締まった響きですが、力いっぱい引き絞ったようなガチガチなものではなく、古楽器系に多い、アタックの強い攻撃的な演奏でもありません。小編成の動きの軽さを生かしながら、柔らかく穏やかに歌った演奏なのです。
 第2楽章はともかくとして、他の楽章は刺激的な鋭い演奏を求める人には向かないでしょう。しかし、こういう軽く優しい音楽というのは、大編成ではちょっと難しい、室内管弦楽団ならでは魅力ではないかと思います。(2005/12/10)


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