指揮 | フランス・ブリュッヘン |
演奏 | 18世紀オーケストラ |
録音 | 1990年6月 |
カップリング | ハイドン 交響曲第93番 他 ハイドン・ロンドンセットの一部 |
発売 | PHILIPS |
CD番号 | 442 788-2 |
全曲これ緊張といった感じの演奏です。 リラックスとか安らぎとかそういった言葉とは無縁の演奏です。 といっても、堅苦しいというほどでもありません。心地よい緊張感といいましょうか、良い具合に力が入っているという感じです。 とにかく力が抜けた音は全くありません。一音一音に力があり、張りがある音なのです。 無駄な音符も一つも無く、どの音符も全体の中での役割をしっかりと認識し、役目を果たしています。 メロディーは躍動感があり、しかもフォルテとピアノでメリハリがついていて、小編成のオーケストラの特長である小回りのよさを存分に生かした、小気味良いものです。 特に第1楽章のアレグロに入ってからの弾むような歌い方は、明るく可愛く、とても楽しい気持ちになります。 また、第3楽章などでは、頭にアクセントをつけた後、直ぐに音を抜いているので、とても軽やかで、涼しげな風が感じられます。 ところで、演奏に関してではありませんが、第1楽章を聴く度に不思議に思っている部分があります。 それは、第1楽章のアレグロに入った後、提示部の次に展開部に入る部分です。 もちろん譜面にもあるのですが、展開部に入る前に2小節間全休止があり、この部分で音楽が完全に止まってしまったかのようです。 これが、この全休止を境に音楽がガラッと完全に変わってしまうのならまだ話はわかるのですが、展開部に入るだけですので、大筋では大きな違いがあるようには聞こえません。 なぜここに全休止を入れたのか、ハイドンさんにぜひ訊いてみたかったものです。 さて、<軍隊>というと、やはり注目は第2楽章と第4楽章の打楽器が盛大に鳴る部分でしょう。 ブリュッヘンの演奏は、期待に違わず、室内オーケストラとは思えないほど派手に鳴らしてくれます。 しかも、編成にない楽器が入っているように聞こえます。 「チャッ、チャッ、チャッ、チャッ……」という音で、特定はできないのですが、スネア・ドラムに近いような気もします。 動きとしては、大太鼓(バス・ドラム)と同じ四分音符での割と細かいリズムです。 そういえば、楽譜を見ていて気が付いたのですが、この曲って、クラリネットは第2楽章にしか出て来ないんですね。 第2楽章では割と活躍するので、ずっといたような気がしていましたが、実はスポット参加みたいなものだったのです。 ロンドン・セット全体でみても、クラリネットは含まれていない曲の方が多く、例え入っていても、まるでモーツァルトのハフナー(35番)のように、ほとんどアシストに近い扱われ方も少なくありません。 この時代がまだクラリネットが普及しかけの時代であったことがよくわかります。(2001/6/15) |