F.J.ハイドン オラトリオ「天地創造」

指揮ネヴィル・マリナー
出演ソプラノ(ガブリエル):バーバラ・ボニー
テナー(ウリエル):ハンス・ペーター・ブルホヴィッツ
バス(ラファエル):ジャン=ヘンドリック・ルーテリング
ソプラノ(エヴァ):イーディス・ウィーンズ
バリトン(アダム):オラフ・ベーア
演奏シュトゥットガルト放送交響楽団
シュトゥットガルト放送合唱団
録音1989年6月5〜9日
発売EMI
CD番号CDS 7 54038 2


このCDを聴いた感想です。


 聴いた時の第一印象はひたすら『地味』というだけでした。
 とにかく押し出しが弱く、華やかさに欠けていたのです。
 今でこそ、別の視点でこの演奏ならではの魅力がわかってきましたが、そもそも『地味』だと感じた一番の要因は、フォルテの弱さにあります。
 特にオーケストラがフォルテで前に出てこないのです。たしかにピアノの部分よりも大きく強くは演奏しているようなのですが、アタックが弱く、何度か登場する、神の偉業を讃えて合唱が歓喜を爆発させるといった、ここぞという場面でも、まるで限界まで力を出すのを恐れているかのように、どこか躊躇しています。
 合唱や独唱は、ちゃんと歓喜が爆発して十分に華やかなのに、オーケストラだけ置いていかれています。いやそれどころか、合唱と独唱がフォルテで登場すると、オーケストラはその輝きの陰に隠れてしまい、ほとんど日陰者のようにこそこそと引っ込んでしまいます。おかげで合唱と独唱にまで影が差し、全体としても今一つ大人しく聞こえるのです。
 オーケストラもピアノの部分などを細かい部分まで注意して聞いてみると別に技術的に劣るわけではありません。それどころか、単独で登場する管楽器のソロの音色は深みのある音で、メロディーも表情を込めて歌っていますし、弦楽器のアンサンブルや全体での響きもきれいに揃っています。ただ、音色は深みあっても色彩豊かという傾向ではありません。さらに、これが一番大きな原因のような気もするのですが、録音を編集する際にバランス弱く抑えすぎたのではないでしょうか。おそらく合唱や独唱に対抗できる音量であれば、ここまで地味な印象は受けなかったと思います。
 じっくり聴けばしだいに隠れた良さに気付いてくるのですが、とにかく最初のインパクトが弱いために大きく損をしている演奏です。

 一方、合唱と独唱はよく音が伸びています。
 特に、独唱はこの演奏で最も大きな魅力でしょう。
 なによりもその音色に惹かれました。
 どの歌手も、下に良く響く深みのある音でありながら、重すぎませんし、暗く沈んでもいません。柔らかな明るさを保っています。さらに、高音でも音が痩せて悲鳴のようになったりせず、常に余裕が感じられます。
 歌い方も表情豊かで、なにより、曲中にときどき出てくる二重唱、三重唱でのバランスがとても良いのです。和音が美しく響くのはもちろんのこと、二人や三人で歌っているとは思えないほど、響きに厚みがあります。
 もしかしたら、オーケストラのバランスが弱いもの、この独唱陣を聞かせるためにわざと抑えたのじゃないかと思えてきました。

 個人的に、もう一つ特筆しておきたいのが、ジャケットのデザインです。
 これは、廉価版のDouble forteシリーズではなく、おそらく1990年頃に初めてCD化された方のジャケットです。
 どこぞの神殿のレリーフにでもなりそうな、真ん中が顔になった太陽が中心から少し右寄りにドカンと居座り、それがまっ黄色に塗られて強烈に存在感を放ち、その周りには星やら大地やらの天地創造に登場するものが青や緑に塗られ奔放に並んでいるという、やたらとカラフルでインパクトのあるイラストです。
 そもそもこのCDは買う予定なんてなかったのですが、そのデザインに圧倒されて思わず手を伸ばしてしまいました。(2006/1/14)


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