F.J.ハイドン オラトリオ「天地創造」

指揮アンタル・ドラティ
出演ソプラノ(ガブリエル):ルチア・ポップ
テナー(ウリエル):ヴェルナー・ホルヴェーク
バス(ラファエル):クルト・モル
ソプラノ(イヴ):ヘレナ・デェーゼ
バス(アダム):ベンジャミン・ラクソン
演奏ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
ブライトン祝祭合唱団
録音1976年12月
カップリングハイドン サルヴェ・レジナ
発売DECCA
CD番号443 027-2


このCDを聴いた感想です。


 ハイドンともなると、この「天地創造」のような大作であっても、最近は古楽器や小編成の演奏が増えてきました。
 しかし、この演奏は、今世紀前半から主流だった現代楽器でかつ大編成による演奏です。
 当然、演奏の方にも大編成の特徴が如実に表れています。
 みなさんは、大編成というと迫力のあるフォルテとか、周囲を圧倒するかのような巨大な響きを想像されるかもしれませんが、実はそれはあまり特徴にはなりません。
 もちろん、これがCDではなく実演に接しているのであれば、編成の大小の差がそのまま音量にダイレクトに影響するのでしょうが、自室でCDを聴くのであれば、音量なんてボリュームのつまみをいじればいくらでも変えられます。さらに少人数の方がキチンと揃え易いため、アクセントやアタックにカチッとしたエッジが立ち、むしろ小編成の方がアタックが強く聞こえる場合もあります。
 実際、この演奏でもフォルテの部分はたしかに音の厚みは感じられるのですが、ここぞという部分のアッタクに鋭さがあまりありません。
 では大編成であるこの演奏はどこが魅力かと言いますと、それは音の柔らかさにあります。
 人数の多いため響きが豊かになり、その響きが全体を包み込んでいるため、フォルテでも音が荒れずよくまとまり、一体感があります。
 これが、さらに上手く活かされているのがピアノの部分で、音が小さくなってもちゃんと豊かな響きを伴っているため、音楽に潤いと余裕が生まれ、毛皮を触ったときのような滑らかな柔らかさと暖かみが感じられます。
 早い話が、この点は、小編成の魅力である鋭い活きの良い音楽のちょうど裏返しになるわけです。
 さらに、このドラティの演奏には、特筆しておきたい魅力がもう一つあります。
 その魅力とは木管の響きで、弦楽器等の厚い響きと較べて、一瞬「あれっ?」と感じるくらい響きが薄いのです。
 響きが薄いというと、それは欠点ではないかと思われるかもしれませんが、そうではありません。
 響きが薄いため、柔らかさは薄れますが、その一方で覆い隠すものが無くなり、ハーモニーがより純粋に聞こえてくるようになります。
 これは、木管のハーモニーが合っていないと丸分かりになってしまう欠点があるのですが、幸いこの演奏の木管はキチンと揃っているため、心が洗われるような清澄な耳にする事ができます。
 それにしても、この演奏の録音が行なわれた1976年頃は、ちょうど首席指揮者がケンペからドラティへ切り替わる時期で、ロイヤル・フィルのレベルも安定していたとは言い難い時期の筈なのですが、これだけアンサンブルが引き締まっているのは、やはりドラティのオーケストラビルダーとしての腕の良さの表れなのでしょう。(2002/11/1)


サイトのTopへ戻る