F.ショパン ピアノ協奏曲第1番 ホ短調

指揮スタニスワフ・スクロヴァチェフスキ
独奏ピアノ:アルトゥール・ルービンシュタイン
演奏ロンドン新交響楽団
録音1961年6月8-9日
カップリングショパン ピアノ協奏曲第2番
発売BMG(RCA)(LIVING STEREO)
CD番号82876 67902 2


このCDを聴いた感想です。


 なりよりもピアノの音色の美しさに惹かれました。
 一つ一つの音に透明感があり、よく響きます。しかも、硬質な響きなのに、よそよそしさは無く、感情がこもっていて暖かさを感じます。ちなみに、このCDはCDフォーマットではなくSACDなのですが、その点も影響しているのでしょうか、録音が1961年とそれほど新しくないのに、まるで目の前で演奏しているかのようにこちらに音が伝わってきます。
 メロディーの歌わせ方も、第2楽章では、しっとりとした露のような音が、葉の上を滑っていくかのようで、テンポを動かしながらも、それが一連の流れになっていて、自然でしかも瑞々しいのです。
 第3楽章では、速い曲調に合わせてタッチは鋭くなっていますが、音色は透明感はそのままで、余韻が周りにサーッと伸びて行き、澄んだ響きを保っています。さらに速いテンポに乗って、音が軽快に飛び跳ねています。地面に留まることなく、常に地面を蹴って跳んでいるように、音楽が空中にパッと広がるのです。テンポの伸び縮みも結構ありますが、これも表現に変化をもたらし、メロディーをより生き生きと聞かせています。
 ただ、なぜか第1楽章では、それが今一つ不自然に聞こえます。
 音色は、他の楽章と同じように透明感があり、それは素晴らしいのですが、メロディーの歌わせ方がどうも不自然なのです。
 これは、わたしの好みの問題かもしれませんが、他の楽章では生き生きと聞こえたテンポの伸び縮みが、この楽章に限っては余計に感じられます。メロディーの途中で、テンポにブレーキがかかった時に、音から次の音へのつなぎがいやにもったいぶっているように聞こえ、もっとイン・テンポですっぱり進めて欲しいという気になってくるのです。テンポの伸び縮みしていること自体は他の楽章となんら変わりは無いのに、第1楽章だけは聞いてイライラして来るのがなんとも不思議です。
 一方、伴奏のオーケストラですが、これもまた素晴らしいものです。
 これも冒頭を聞いた瞬間は、音が割れ気味で、音色もくすんでいるように聞こえたため、どうもあまり良くないと思いました。しかし、ピアノソロが登場した辺りから、急に鮮やかになってくるのです。
 みなさんもご存知の通り、この曲の伴奏は他のピアノ協奏曲と較べてかなり地味で、オーケストラだけの部分はまだしも、ピアノソロがある部分では、ほとんど弦楽器が伸ばしの音を弾いていてたまに動くぐらいの、言ってしまえば大した事をやっているわけではありません。しかし、この演奏の伴奏は、ただ伸ばしている音だけでも驚くほど存在感が出ています。たった一音伸ばしているだけであっても、その中で歌い、違う音に変わる時には、ただ音の高さが変わったのではなく、まさにメロディーのように表情が感じられます。
 特に第1楽章なんかは、わたしがピアノソロにあまりピンと来なかったこともあって、ピアノソロが演奏していても、むしろバックの伴奏の方に耳を奪われることが多かったぐらいです。幸い第2・3楽章は、ピアノソロが素晴らしかったため、意識も本来のソロメインになりましたが、第2楽章以降のピアノソロが第1楽章同様だったら、危うく伴奏の印象しか残らないところでした。
 それにしても、演奏している「ロンドン新交響楽団(英文表記はNew Symphony Orchestra of London)」とは、どういう団体なんでしょうか。1950〜60年代の協奏曲の録音などで時折名前を目にしますが、素性を調べてもよくわかりません。RCAビクター管弦楽団みたいに録音上の変名なのか、それともロンドン響とロンドン・シンフォニエッタみたいに全くの別団体なのか。結局謎のままです。(2010/4/3)


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