E.ヴァレーズ アメリカ

指揮クリストフ・フォン・ドホナーニ
演奏クリーブランド管弦楽団
録音1993年8月
カップリングアイヴズ 交響曲第4番 他
発売DECCA
CD番号443 172-2


このCDを聴いた感想です。


 このCDを買ったのは今から7〜8年前のことで、そもそもアイヴズの第4番を聴こうと思って入手したものです。ヴァレーズは言ってしまえばおまけのようなものでした。アイヴズを聴いたついでに、せっかくだからと、一応聴いてみたものの、最初に聴いた時は、途中で唐突にフォルテで不協和音が登場するわ、パーカッションがやたらと出てくるわと、アイヴズがまだ理解できるような流れが感じられたのに対して、こちらはさっぱり理解できず、なんだかわけの分からない曲で終わってしまいました。なるほど、これがまさに悪名高い「現代音楽」だなと納得したものです。
 ところが、最近久しぶりに聴き直してみて少し考えが変わりました。
 この曲、聴き方を変えると意外と聴きやすい曲です。
 これまでは、フォルテの部分ばかり意識が向いていたため、テンポもメロディーも無く間歇泉のように突発的に盛り上がるだけの曲だと思っていましたが、ピアノの部分に意識を向けると、テンポやリズム、さらにはメロディーがあることもはっきりとわかります。
 しかも、そのテンポやリズム、メロディーは意外ときちんと決まった形を持っていて耳に馴染みやすいものなのです。
 テンポは音楽の切れ目でははっきりと変わるものの、一つの音楽の中ではあまり動くことはありません。むしろ時計のように一定のテンポを保って進んでいきます。リズムの方も、パーカッションが山ほど登場するため、一見、複雑なように見えますが、個々の楽器はそれほど不規則なリズムを刻んでいるわけではないようです。単純なリズムながらそれらがいくつも同時に登場するため複雑に聞こえるのです。
 しかも、リズムは結構何度も繰り返されます。
 曲の終盤に出てくる高音の管楽器が演奏する下から上へと跳躍する音の動きなんかがその典型です。二つの音を下から上へ上がる動きを同じリズムで2回とか3回とか往復し最後は上の音で盛大にトリル、そのセットを、しつこいぐらい何回も繰り返しています。非常にわかりやすい動きで何度も出てくるものですから、あっという間に覚えてしまいました。
 メロディーも、一気に盛り上がるフォルテの部分はあまりメロディーらしいメロディーは無いのですが、ピアノの部分は、一つ一つは短いものながらはっきりとしたメロディーが出てきます。それも、あまり12音音楽系の無機的な動きではなく、歌おうと思えば歌えるんじゃないかと思えるような表情が感じられるメロディーです。同じCDに入っているアイヴズもメロディー自体はわかりやすいものですが、それがいろんなテンポで同時に登場するためちょっとややこしいことになっていますが、この曲はそういうこともありません。二つ以上のメロディーが同時に登場することもありますが、メロディー一本にリズム系の伴奏のみというパターンが多いのです。ピアノの部分に限れば、むしろアイヴズよりも聴きやすく感じました。
 さらに言えば、これはドホナーニの演奏による利点もあったと思います。他の演奏を聴いたことが無いのであまり言えませんが、おそらくかなりアンサンブルがきちんと整った透明度の高い演奏でしょう。だからこそ、リズムやメロディーの動きをしっかりと聞き取ることができたのです。
 一方、フォルテの部分は、これはもうメロディーや伴奏がどうこうというものではなく、オーケストラ全体で一つの音の塊と考えた方がいいような気がします。
 一つの音の塊といっても、全員が同じ動きをしているわけではなく、むしろ各自別々の動きをしていますが、組み木細工の部品の一つ一つはそれぞれ違う形でも全部合わせると一つの形になるように、それぞれの楽器が部分を担当して、それが組み合わさって一つの動きになるのです。その全体の動き自体は単純なもので、ピアノから一気に盛り上がって頂点に至る、基本的にその繰り返しです。ただ、その全体による盛り上げは、これに多くのパーカッションが加わっていることもあり、壮絶な迫力を持つ独特な世界です。わたしが最初にこの曲を聴いた時は、ここばかり聞こえて来たために、不可解な曲に思えたのです。
 また、この曲は、パーカッションにサイレンが加わっていることでも有名ですが、聴いた限りではそれほど重要な役割ではなさそうです。たしかにサイレンが加わると、緊急時を連想して一風変わった緊張感と雰囲気が生まれていますが、要は効果音で、無いと淋しいけど、曲が成り立たなくなるというわけでもなく、まあスパイスといったところだと思います。(2007/3/31)


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