E.ラロ スペイン交響曲

指揮ウラディミール・ゴルシュマン
独奏ヴァイオリン:ナタン・ミルシテイン
演奏セントルイス交響楽団
録音1954年12月12日
カップリングビゼー 歌劇「カルメン」組曲 他
発売EMI(Capitol)
CD番号CDM 7243 5 66552 2 5


このCDを聴いた感想です。


 まずはこの曲ならではのお約束事項から。
 第3曲はカットしています。
 この点について、曲をご存知ない方のために簡単に説明すると、スペイン交響曲という曲は、全部で5楽章ありますが、その中の第3楽章である<間奏曲>は、難しい割に演奏効果が上がらないなどの理由によりカットされるのが慣例でした。なにしろ初演ですらカットされたぐらいですし。現在でこそ楽譜通り全楽章演奏が標準となりましたが、この演奏が録音された50年代前半はまだカットする事も多く、その慣例に従っているのです。

 さて、演奏の方では、なんといってもヴァイオリン・ソロに強い存在感を感じました。
 まずは音色。少し暗めの音ながら芯は太く、なにより情熱的な輝きと力強さがあります。特に低音でゆっくりと動くメロディーではそれに夕暮れのような翳りが加わり、いかにもスペインらしい哀愁漂う音色になっています。
 その一方で歌い方は、あまり感情の赴くまま奔放に歌い上げたという感じではなく、テンポを崩さず硬くじっくりと歌ったもので、第1楽章では、その抑えた表情が感情を必死に押し殺しているようでますます哀愁を深めています。
 逆に、ゆったりとした第4楽章ではかなり力を入れて歌わせています。それでもやはり感情をそのままストレートに出したような歌い方ではなく、グッと拳を握り締めて内側に力を溜めたような重みのある歌わせ方で、哀愁を帯びた音色がそれにまたよく合っています。
 一方、速いテンポの部分は、音がスピードに乗っていて勢いがあり、短く切った音も見得を切ったみたいに余韻を残しながら思い切りが良いなど、非常に爽快で、見事に音楽にピッタリとはまっています。ゆったりとした部分も良かったのですが、個人的には、速いテンポでの曲との一体感はそれをさらに上回っていると思います。

 伴奏のオーケストラは、締まった響きが印象的です。
 硬く、ひたすら硬くキッチリと演奏していて完全に伴奏に徹しており、ソリストを上手く浮かび上がらせています。
 スペインのイメージですから、もうちょっと崩した方が南欧らしい雰囲気が出るような気もするのですが、ほとんど隙を見せません。
 ただ、音色自体はドイツ系と違ってかなり明るめなので、締まっているからといって息が詰まりそうな雰囲気ではありませんし、重くも無く、それよりもスッキリとしたスマートな印象を受けます。
 しかも、速い部分の動きなどはなかなか素早く、ソロとオーケストラの掛け合いの部分なんかは、気持ち良いぐらい反応鋭く切り替わっています。
 基本的に、ソリストのミルシテインが主役とはいえ、オーケストラもあまり目立たないながらなかなか聞かせてくれる演奏です。(2004/11/13)


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