E.H.グリーグ 「ペール・ギュント」組曲

指揮ニコライ・ゴロヴァーノフ
演奏全同盟ラジオ・テレビジョン大交響楽団
録音1948年
カップリンググリーグ 叙情組曲 他
発売rlecchino
CD番号ARL A30


このCDを聴いた感想です。


 描写性の高いペール・ギュントをゴロヴァーノフが指揮をしたら一体どれほど面白いのか。
 きっとデフォルメされた派手な演奏をやってくれるであろう、そう期待して聴き始めました。
 たしかに、期待に違わぬ動きの大きい派手で面白い演奏です。
 その点ではまさに期待通りというべきなのですが、最後の「ソルヴェイグの歌」を聴いた時、意表をつかれました。
 ただ面白いだけでなく不覚(?)にも胸にグッと迫るものがあったのです。
「ソルヴェイグの歌」には歌が入るバージョンと歌が入らず管弦楽のみのバージョンがあります。この演奏は管弦楽のみのバージョンで、メロディーはだいたいヴァイオリンを中心とした弦楽器が演奏しているのですが、この弦楽器の歌わせ方が非常に悲しい雰囲気を出しているのです。
 テンポなどはゴロヴァーノフらしく頂点まで一気に加速して駆け上がったと思えばそこから緩やかに遅くなったりと伸び縮みが大きく、それがまた感情を良く表していますし、なにより音色が薄く灰色で寂しさと悲しみが滲み出ています。
 ただ、静かに落ち込んでいるといった雰囲気ではあまりなく、といっても「イングリッドの嘆き」(第2組曲第1曲)ほど泣き叫ぶような激しさではありませんが、切々と訴えかけてくるように、感情を表に出して積極的に悲しさを表しています。
 また、メロディーは短調系の悲しげなメロディーだけではなく途中で長調系の明るいメロディーも登場するのですが、透明感があるためまるで幻のようで逆に余計に悲しく感じられました。
 実は、このCDには管弦楽バージョンの「ソルヴェイグの歌」だけでなく歌が入ったバージョンも収録されているのですが、そちらは管弦楽バージョンほど悲しさを感じませんでした。
 別に歌手の歌い方が悪いわけではなく、バランスが悪く歌が大きすぎるためで、どうしても管弦楽のみのバージョンほど一体感が無く、浮いて聞こえるのです。

 一方、「ソルヴェイグの歌」以外の曲は、わたしの期待通り面白い演奏でした。
「朝」なんか粘りつくような歌い方なので、すがすがしい朝どころかいきなり夜の歓楽街みたいですし、「アニトラの踊り」は誘惑の踊りのはずが妙に勇ましくむしろ男っぽい雰囲気です。まあスメタナの「わが祖国」の第3曲「シャルーカ」みたいなものと考えれば、意外と誘惑しているように思えなくも……いや、やっぱり思えませんが(笑)
 ある意味強烈だったのが「オーゼの死」です。
 テンポの変化のさせ方や歌い方はほぼ「ソルヴェイグの歌」と同じなのですが、「ソルヴェイグの歌」は一人の乙女が必死に訴えかけているようなけなげな雰囲気があるのに対して、「オーゼの死」はまるで100人が号泣しているようで、あまりにも太く大仰なので聴いている方はかえって引いてしまいました。
 同じように激しく感情をあらわにしていても「イングリッドの嘆き」の方は絶望的な雰囲気があり、「ソルヴェイグの歌」とは方向性は大分違いますがこれはこれでたしかに悲しさが感じられます。
 一方、第2組曲の「アラビアの踊り」と「ペールの帰郷」は派手さという点で全8曲の中でも一二を争っています。
「アラビアの踊り」は特に流れるようなスピード感と対照的な可愛らしさがありますし、「ペールの帰郷」はまさに嵐そのもので、楽器を鳴らしきり響きが濁るのも恐れずに生々しい音で激しい音楽を作っていて、この勢いだと難破どころか海の藻屑と消えてしまいそうです。
 それにしても、弦楽器がオクターブ上に飛び上がってそこから半音階で下がっていく辺りはやはりベートーヴェンの田園の第4楽章(嵐)とよく似ていますね。
 さて、お楽しみの「山の魔王の宮殿にて」ですが、さすがに期待通り豪快に決めてくれました。
 派手さという点ではたしかに上記の2曲には少し劣りますが、前半のゆっくりと静かな部分での不気味な雰囲気、中盤からだんだん速く盛り上がっていき、終盤での壮絶な速さはもちろんんこと、雰囲気がまさにすぐ後ろから追われているように切羽詰っていて、手に汗握るような緊張感があり、最後はヒステリックに終わるところなど期待を十分に満足させてくれるものでした。(2004/6/19)


サイトのTopへ戻る