D.ショスタコーヴィチ 映画音楽「司祭と下男バルダの物語」による組曲

指揮ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー
演奏ソヴィエト国立交響楽団
カップリングショスタコーヴィチ 交響曲第1番 他
交響曲全集の一部
録音1979年
販売BMG(MELODIYA)
CD番号74321 72915 2


このCDを聴いた感想です。


 この曲はショスタコーヴィチの交響曲全集を買ったらたまたまカップリングで入っていたのですが、思わぬ拾い物でした。

 わたしは、ショスタコーヴィチは、交響曲のイメージからいかめしい雰囲気の曲ばかり作っているのだと思っていました。
 ところが、この「司祭と下男バルダの物語」のような映画音楽をはじめ、管弦楽曲の中には、遊び心がふんだんに込められている曲が結構多いみたいなのです。
 イメージ的には交響曲第9番に近く、一見メロディーなんかは民謡調のような通俗的な感じがしますが、実は曲全体には皮肉的な色合いが濃く表れています。

 正直な話、わたしはこの「司祭と下男バルダの物語」という映画を全く知らないのですが、組曲は映画を知らなくても十分に楽しめます。
 もちろん、実際に映画を知っていればもっと楽しめるとは思うのですが(笑)

 組曲は全部で6曲で、最初の「序曲」と最後の「終曲」は全く同じ曲で、他の4曲がこの2曲にサンドイッチのように挟まれる構成になっています。
 この「序曲」と「終曲」はマーチ風なのですが、これがなんだか人をバカにしたような雰囲気に充ちています。
 1分30秒ほどの短い曲なのですが、ミュートした金管楽器とEsクラリネットによるメロディーは、堂々としているようで実はハリボテのような空々しさがあります。
 例えるなら、軍人さんが胸に勲章をいっぱいぶら下げ、立派な口ひげを捻りながら偉そうに歩いているところを、陰から見て冷笑しているみたいです。

 間に挟まれた4曲も、方向性としては一緒で、権威に対する冷たい視線が感じられます。
 その中で、第3曲の「メリーゴーランド」だけは比較的楽しげで安らかな雰囲気があります。
 もちろんあくまでも『比較的』の話で、根底には毒があるのですが(笑)
 メリーゴーランドといっても、華やかなものでなく、ごくごく小さいもののような雰囲気で、それも賑わってはいなくて、たまに親子連れがちょっと乗りに来るというような淋しいもの、でもたまに乗りにきた人にはささやかな楽しさと安らぎをあたえてくれる……そんなイメージです。
 第4曲の「バザール」なんかは、6曲の中で最も派手な曲だと思うのですが、うわべだけで中味が伴わない危うさがよく表れています。

 ところで、この曲、弦楽器がほとんど出てきません。
 スコアが手元に無いので正確なところはわかりせんが、全曲を通じて、管打楽器が前面に出ています。
 部分的に弦楽器が聞こえてきますので、吹奏楽の編成ではないと思うのですが……
 ただ、元が映画音楽なので、変わった編成である可能性は十分にあるでしょう。

 この組曲は、全部通して聞いても10分程度の短い曲ですが、かなり楽しめました。
 予想外にこういう面白い曲を当てると、なんだか得した気分です。(2001/5/4)